パリのセルニュスキ美術館所蔵の青銅器(殷代)〈雌トラ〉という作品と中国の赤ちゃんの時トラに育てられた子文(ジウェン)という男の子の伝説を合わせた作者の創作です。
こどもたちを人間の猟師に殺された母トラが、
その憎しみから人間の村を襲い、
その国の王は占い師の言うことに従い
ウェン王子(4・5歳位?)をトラに差し出すことに…。
占い師の言うことには、“トラは王子に何もしない”
これを聞いて、王子は幼いながらも父の心配をよそに森の奥へ。
トラと王子の出会いの場面は、ドキドキでした。
トラの母性がよみがえり、王子にトラとして学ばなければならない事を教える生活。
月日が流れ、王子はトラに一番近いたくましい少年に…。
虎は、雌だけで子育てをし、生後2年で子は独立するそうです。
「虎の子」と言うくらい、自分の子を非常に大事にするそうです。
成長したウェン王子を見るにつけ、獣も人間もなく、品格のある雄々しい姿に成長していて感動しました。
読者も母トラも救われるエンディングに、この絵本の完成度の高さを感じます。
絵が、本物(中国画)に接した感動を与えてくれます。
トラのかくれがのページは圧巻です。
表紙絵は、この絵本の核となる最も素敵なシーンを使っていて、表紙を見ただけで、この感動がいつの時でも蘇ってくることでしょう。
息子は、「かっこいい」を連呼していました。