ある日の空襲で、お母さんとお兄ちゃんとはぐれてしまった、ちいちゃん。
たった1人、お母さん、お兄ちゃんとの再会を待つちいちゃんの唯一の
心の支えは、家族でやった「かげおくり」でした。
この絵本には、戦争を責めるような言葉は一つも出てきません。
けれども、ちいちゃんを通して、こんなに小さな子どもをも巻き込んでしまう
戦争とは如何なるものか、ということがしっかりと伝わってきます。
現実に、このちいちゃんのように誰にも気付かれずに亡くなった方が
たくさんいたのでしょう。そして、その一人ひとりに様々なドラマがあって、
戦争さえなければ続くはずだった未来が、その人の命と共に消え去った
事実を想像すると、胸が痛みました。
表紙絵の可愛らしくも寂しげな表情が全てを物語っているように感じます。
「かげおくり」が、子ども達にとって楽しい遊びとなりますように。
未来の子ども達が、明るい表情で素晴らしい未来を切り開いていけますように。
戦争のない世の中を、願わずにいられません。
シンプルながら、強いメッセージを感じられる1冊です。