ただただ打つことが楽しくて、打って打って打っていたボクサーは、打つものが何もなくなった時に、ふと我に返ります。
その時にはもう、グローブのハートは破れ、独りぼっちになっていました。
彼は考えます。
「どうして父さんは、ボクシングを教えてくれたんだろう」
人は、順調な時はあまり深く考えないようです。
ボクサーも、そうでした。
深く考えて打つ方向性を変えたボクサーは、人の役に立つボクサーになりました。
打って打って打ちまくることは変わらないけれど、人として成長したボクサーになり、弟子を持つまでになりました。
いつからでもやり直すことはできるのだと、教えられた気持ちになりました。