児童文学には超ロングセラーといえる名作が多い。
例えば、モンゴメリが書いた『赤毛のアン』は1908年に発表されて作品ですでに1世紀が経っているが、今でも人気が高い。
こういう作品が多いせいか、なかなか新しい名作が生まれる余地が少ないともいえるが、ミヒャエル・エンデの『モモ』だけは別格のような気がする。
発表されたのが1973年、日本での初版が1976年と比較的新しい作品である。
それでいて、今では古典のような風格さえあって、人気が高い。
最近でも子どもたちにこの作品を薦める多くの記事を目にする。
テーマとしてはわかりやすい。
忙しさで心の中の大切なものをなくしている現代人への警告が主要なテーマであろう。
副題にも「時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」とある。
ただこの物語が新しい児童文学の古典としての価値を認められるようになったのは、そのテーマ性だけではない。
主人公であるモモの魅力もあるだろう。あるいは、彼女を助けるジジや子どもたちといった脇役の魅力もあるだろう。
もしかしたら、時間どろぼうである灰色の男たちの造形にも一因があるかもしれない。
この作品が長く子どもたちに読まれているのは、なんといっても追いかけ追い詰められる冒険活劇のようなストーリー仕立てではないだろうか。
後半、時間どろぼうに一人立ち向かうモモの活躍といえば、子どもたちが夢中になって読むにちがいない。
そう、時間を忘れて。
もしかしたら、『モモ』こそ子どもたちの時間どろぼうだといえないことはない。