宮大工の見習い小僧のヤスが体験した、不思議な物語。
「うぉー うぉー」「うぉーん うぉーん」
奈良の古いお寺でヤスが出会ったのは、一尺ばかりの小さな鬼。
タイトルは「すみ鬼にげた」ですが、鬼は決して逃げたわけではなく、
またお寺に戻ってきます。いや、もしかしてその時、逃げようと
していたのかな?
1体だけ表情が違うこの鬼は、唐招提寺の金堂の四隅にいる、
木彫りの邪鬼がモデルとのこと。
実際には動くはずのない鬼ですが、もしこの鬼に過去があったとしたら?
苦しそうなこの鬼の姿。「この鬼をここから逃がしたい」という気持ちから、
このお話を作り出した作者の気持ちが、わかるような気がします。
ヤスの手助けがあって、長年の願いを叶えることができた鬼。
いや、願い、というよりは、野望かな?
それは、どんなものだったのかは、是非読んで確かめてくださいね。
実は、この本を私に教えてくれたのは、小5の息子。
学校の図書室で見つけて、お気に入りとなり、一時期、正座をしては
「うぉーん うぉーん」と鬼の真似をしたりしていました(笑)
ちなみに、木彫りの小さな鬼が大きな鬼へ変貌する瞬間の絵は、
結構インパクトがあります。
機会があれば、モデルになった邪鬼を是非見に行きたいですね。