今と違って、昔はお寺にいる人ばかりがお坊さんじゃなかったんです。この絵本の主人公「木彫りの風来坊」も、そんな修行僧の一人でした。
修行僧というと、聞こえはいいのですが、時には何日も食べることが出来ずに、他人様の畑に入り、野菜をいただいてしまうことも…。
でも、風来坊。さすがにただでは持っていけず、得意の木彫りで、仏像を彫ったりして駄賃代わりに置いていっていたんです。(これが意外に人気があったようでした)
そんな道中ある日、山の中で久しぶりに村を見つけ、何か食べ物を分けてもらおうと村びとに声をかけると、村に困ったことが起きているので、助けて欲しいという。
風来坊は内容も聞かずに、先に食事をいただき、さて本題の話になって、焦ります。
毎年、収穫の時期になると、野武士が30人からやってきて、村中のものを持っていってしまうので、それを何とかして欲しいと、いうのです。
考えぬいた風来坊は、大きな木に仁王像を彫って、その中へ隠れて仁王のフリをし、見事野武士たちを蹴散らすことに成功します。
で、村びとがお礼を言いに風来坊の所へやってくると、そこには仁王の像と、やっつけた野武士の大将が転がっていただけでした。
なんて、かっこいいやつ!と思いきや、ラストのページで、風来坊のセリフがまた、よかった。
「この上料理をくったんじゃ、……こんどはなにをたのまれるかわからない。おれは天下の風来坊」
う〜ん。まるで一話完結の時代劇を見ているようでした。
表紙だけ見ると、むさ苦しいお坊さんの絵だけ・