山の中に住んでいる子ウサギたちが、母親を待つ様子を描いた話。
1985年刊行。この絵本のいいところは、状況があまり詳しく描かれていないところだと思った。
本当はどういうことだったのかが、最後まで分からないで話が終る。だから読者は、ああでもない、こうでもないと想像するしかない。子ウサギに対する思い、山姥に対する思いがあれこれわいてくる。
思いやり、慈悲、見守る、という言葉が思い浮かんだ。
子ウサギのお母さんの気持ちや、山姥の気持ちを想像すると、切なくなる。それを上から見ているお月様の気持ちを想像すると、途方もなく壮大な気持ちになる。
いろんな事が起きる人生の一部を切り取った話に感じられ、心が締め付けられる。
と、同時に、心があったかくなる。
どうにかして生きてかなければならない人生の厳しさと、ひとりではなく、見守ったり助けてくれる人がある優しさが見事にえがかれていると思う。
大人になってから読むと、余計に心に染みる一冊。