作者ロイス・ローリーの1945年の実話。
最終ページにローリー・ロイスの写真があります。
物語に登場するのと同じダボシャツを着ていますが、そこにこう書かれています。
「この物語はすべて事実にもとづいています。
これは1945年、わたしと父の間にほんとうにあった出来事です。
親と子どもはおたがいを理解するために手さぐりで生きていくものです。
それはだれでもそうです。
ですから、この物語はわたしだけではなく、みんなのおはなしでもあるのです」
この言葉は、今、単身赴任していて、子ども達と離れて暮らしている自分にとって心の琴線に触れるものでした。
物語の時代背景は、1945年。
父は、第二次世界大戦に出陣していたので、長い間、家を離れていました。
そんなある日、父とロージーはカラス狩りに出かけます。
多感な時代を離れ離れに長いこと暮らしたと言う事実は、厳然たるもので、狩りに行く途中の車中、食堂での食事、狩猟地までの徒歩の間、二人の間には、微妙な距離があるのです。
そんなロージーの心情が痛いほど伝わってくる文面に、思わず惹きこまれてしまいました。
カラス狩りでのロージーの役目は、カラス笛をふくこと。
カラス笛に反応して集まったカラスを、父が発砲するというのが役割分担だったのですが、父は発砲することなく帰途につくのです。
ロージーが銃を怖がっていたことを察知したからなのか、カラスに親しみを持って接したことを大切に思ったのか、様々な理由で発砲しなかったのだと思いますが、そんな父の気持ちをロージーは心から受けとめるのです。
些細なことであっても、子どもにとってみれば、凄く大事なことって沢山あるはず。
それに気づかないと、上辺だけの親子関係に終わってしまうのでしょう。
この絵本は、間違いなく大人向けです。
それも、母向けではなく、父向けの絵本であって、是非、世の父が噛み締めて読んで欲しいものだと思います。