今、あちこちで「小さな」小学校が、廃校になり統合されています。その理由は大抵、「○○人しかいない学校に、光熱費や人件費をかけるのはもったいない」という大人の事情なのに、表向きは「少人数では、社会に出たとき困るから」などという余計なお世話的偽善で進められていくのです。残念で悔しい限りです。
そんな大人の責任回避といやらしさに、ふんわりと問題提起をしているとも言えるこの作品。とてもいいです。
書き出しが
ここは、やまがたけんの やまのなかにある たらのきだい分校です。
分校には、19にんのせいとと ふたりの先生がいます。
ちいさな ちいさな がっこうです。
となっています。これが「19にんのせいと{しか}いません」だったら読み進めなかったかも知れません。
19にんのせいとと ふたりの先生がいます。
この言い方一つで、教育のありかた、作者の暖かさが伝わるのです。
田植えから収穫祭までの間を舞台として、自然の中での魅力的な授業や、2年生のさつきと1年生のあいの心の交流を軸として展開する物語は、どの登場人物もエピソードも奇をてらうことなく、淡々と描かれていきます。こんな場面がいいですよと紹介するより、とにかく読んでください!という感じです。