児童書『つくも神』のコンビによる絵本。
伊藤遊さんの優しい目で表現する子どもともののけを、岡本順さんが親しみやすい雰囲気で包み込んでくれています。
大人が見ているものを一緒に見たくて、早く大きくなりたいと思うわたし。でも子どもにしか見えないものだってあるんだね‥。
“きつね火”は、僕が幼い頃、近くの町に伝わる言い伝えを集めた本の中にもありました。氏神様のお話しだったのでよく憶えています。
鳥居をくぐると背の高い松が連なる参道がつづき、お社はその奥の闇にかすんでしまうくらい、それはそれは長い松のトンネルでした。その松の天辺に、夜な夜なきつねが火を灯もす、というものでした。
その頃、辺りは道路の街灯で明るく、もののけが出そうな雰囲気ではなかったのですが、子どもながらに見えたら怖いな、でも見てみたいなと複雑な気持ちで、松の天辺を見上げたものです。
この話しを7歳の息子にすると、「うそでしょう?」と怖がって、僕にくっついて来て、まだまだ可愛いなと思いました。
もののけにとってはますます出ずらい環境になっていますが、昔も今も変わらない子どもたちが、もののけに会えるといいねと思ったお話しです。