戦争を生きのびたテディベアが、自らを語る絵本です。
表紙の絵は、決して可愛くはありません。
胸には大きな傷があります。
中を読んで、その理由がわかりました。
オットーと名付けられたテディベアは、ユダヤ人のデビッドと、ドイツ人のオスカーとの友情の証だったのです。
ヒトラーの政策によって連行されるとき、デビッドはテディベアのオットーに友だちのオスカーのことを頼んだよと、友だちに手渡すシーンが印象的です。
オスカーにオットーのことをを頼んだのではなかったのです。
オットーは、戦火の中でオスカーと離れ離れになります。
偶然であったアメリカ兵の命を助けることになり、有名なテディベアとしてアメリカに渡ります。
その後の生活は決して幸せではありませんでしたが、再びオスカーとデビッドの再会の仲立ちをすることにをなったのは感動的でした。
多くの不幸を乗り越えてきたテディベアの自伝です。
これを実話のように読んでしまうほどに、ウンゲラーの物語は巧みです。
戦争や人種差別や、様々な歴史背景があっても、灯火のような光に終わる物語には救いがあります。