レビューを読んで、読みたいと思っていた一冊です。
原発事故による悲劇の物語です。
フィクションだと思っても、話の重さと緊迫感と、やるせない悲しみに呑みこまれ、打ちのめされてしまいました。
福島では本当に原発事故がありました。
大災害による大津波。
想定外という言葉で、脆弱な安全対策を意識していませんでした。
日本では縁のない話だと、日本の安全神話を信じ切っていました。
でも、現地では必死の思いで避難した人たちがいました。
この物語ほどではなくても、きっと避難した人たちからすればこの物語に共感することでしょう。
見えない雲。
このキーワードがたまらなく恐ろしいことに変わりはありません。
そして、まだ見えない雲の恐怖は終わっていません。
原発事故で、家族に取り残された姉弟。
必死に逃げる人々。
この本には、救いや希望がありません。
逃げる途中に死んだ弟。
どこかで避難しているとおもった親兄弟も死んでいたという事実。
避難者を見つめる、排他的な冷たい視線。
主人公のヤンナーベルタは容赦なく、苦しみを押し続けられます。
仮想の話ではあっても、嘘ではないという説得力を感じました。
明るさの見えない、とても怖い話でした。
怖い話だけれど、一気に読み終えて、フィクションであることにホッとしました。
ただ、見えない雲の恐怖は、大きくなったままです。