2008年のアメリカの作品。
登場するのは、母、メイベル、ぼく、エデイという4人家族。
食べるにはひどくことかいていた一家。
立派な母さんのために、長女のメイベルが考えたことは、
「ケニーさんとこの畑からあたしたちがとらなかったとしたらさ、じゃがいもはきっとくさっちゃうんだから。それって、すごくっもったいないことだわ。」
「ものは良いよう」とは良く言ったもので、単なるじゃがいも泥棒をするということ。
母さんが夜勤の日に3人は決行します。
貧しさからくる悲壮感はなく、子供達は、夜の冒険にワクワクしながら泥棒をしているようです。
その成果と言えば、ほとんどが石ころで、じゃがいもは少ししかありません。
あたり一面が畑で、月明かりしかないのですから、じゃがいも掘りが上手くいくはずもないのは、自明の理。
がっかりしているところに、帰ってきた母さんが全く喜ばないことが、追い討ちをかけるのです。
母さんのその泥棒行為に対する裁き、また、農場主の対応を見ると、お手本のようなものです。
何でも叱るだけでは、物事は解決しないのだと、改めて思い知らされたような気がします。
こういう失敗の経験を通して、子供は成長を重ねていくのでしょう。
貧乏を売りにしたTV番組が数多く放映されています。
最初は面白がって見ていた自分がいるのですが、何か違うと思い始め見なくなりました。
そんな自分が求めていたものは、この絵本の中にあるような親子の関係ではないのか?
心の琴線に触れた思いがしています。
文章は、ぼくが、ことの顛末を、少し離れた位置から冷静に、ユーモラスに、口語体で語りかけてくるもの。
ぼくに感情移入してしまうお子さんは、多いのではないでしょうか?
ノスタルジックな雰囲気を醸し出す絵も、このストーリーにマッチしたもので、完成度の高い作品となっていると思います。
読めば読むほど、味わいの深さが感じられる良質な絵本としてオススメします。