4つの短編集です。
ごく普通の友だちづきあいに、少し日常的ではない出来事を描いています。
心の片隅にちょっとうずきを感じるようなお話ばかりです。
「ダルマ」の道雄と和男。
だんだん視界を失っていく和男の生活を見つめて様々な思いを抱く道雄。
6年生に進級する時に盲学校に転校していく和男。
暗い部屋で画面に顔をつけるようにしてゲームをしていた和男が奇異に思えたけれど、もう必要ないからとゲームを渡されたとき、道雄は障害ということを痛感させられます。
「てがみ」の研之助とヤッちゃん。
同姓同名の矢野内研之助宛の手紙を間違って受け取った研之助。
興味もあって、もう一人の矢野内研之助に届けようとします。
友だちのヤッちゃんが加わって、もう一人の研之助がどんな人物か空想が広がります。
たどり着いたら、その人は故人だった。
せつなさを感じさせられました。
「ひったくり」のぼくとコウちゃんの話は圧巻です。
カツアゲされた腹いせに、自転車でおばあさんの荷物をひったくったコウちゃん。
ぼくも半分お金を受け取って、持ち物を草原に放り投げて、共犯になってしまいました。
ひょっとしたきっかけで、二人はおばあさんの持物の中にあった写真が、戦争で死んだおばあさんのご主人だったことを知るのです。
お金は戻ってこなくてもいい。
一枚だけの形見の写真を失った悲しみを語るおばあさんの言葉は悲痛でした。
二人で必死になって探し出した写真。
お金は使い切ってしまったけれど、写真をおばあさんの家にこっそり届けます。
そんな二人に、おばあさんは「ありがとう」と言うのです。
この「ありがとう」が心に響きます。
「みつばち」の春子と真理とミズキ。
突然春子の家のポストに100万円のお金が投げ入れられました。
近所の真理の家にも同じように100万円。
ところがミズキの家には投げ入れなかったのです。
調べたところ、投げ入れたのはおばあさん。
500万円を投げ入れたそうなのです。
200万円が見つかりません。
ミズキが春子と真理から疑いを持たれます。
紆余曲折があって問題は解決するのですが…。
仲良し同士の中にふっと湧いた疑心暗鬼。
それぞれ、他人事にできないお話でした。
考えさせられる内容です。