丘修三さんの作品にしては、ずいぶんポップな印象がありました。
しかも挿絵が「ささめやゆき」さんなので、更に可愛い感が倍増されていました。
中身はラブレターにまつわる7つの短編と、たぶん丘さんご自身の初恋の思い出を短くまとめたエッセイのような《始まり》の章がありました。
最初の方は小学校時代の初恋を扱った物ばかりで、年頃を考えれば自分の下の子くらいの子どもたちが、ほの淡い恋を抱えて一生懸命思いを託している姿が、いろいろなバージョンで描かれていて見ていてほほえましくなりました。
「やられた〜!」と、思ったのは最後の章、『魔法の薬』です。
ストーリーの展開だけ見れば、割とよくあるものかもしれませんが、
1つ1つの状況の描き方も素晴らしいし、
子ども心に母を思う主人公:ジュンのお兄ちゃんらしさが健気だったので、ぐ〜っと入り込んで読んでしまいました。
特に、最後のこの“ラブレター”には、わかっちゃいるけど涙が出てしまいました。
若くして家族を残して先に逝かなければならなくなった親の気持ち、子を持つ親としては、共感せずにいられませんでした。
内容的には小学校4年生くらいから読めるものですが、
同じ年頃のお子さんたちより、ちょっと大きくなって「あの頃」を思い出して気恥ずかしくなったり懐かしく思える年頃の、もう少し上の子たちの方が、じっくり感じることができるかもしれません。