宮城県気仙沼市、大島で連絡船を運航する菅原進さんの実話。
2011年の東北大震災で、津波を乗り越え、沖に出て助かった小さな船「ひまわり」は、震災直後の混乱の中、人々の大事な交通手段として、大島と本島を行き来した。
菅原さんの人生の一部分のみではなく、生い立ちから現在に至るまでの流れを追い、臨場感あふれる文章でつづるドキュメント作品。
貧しい漁師の子どもとして生まれ、親に高校進学を反対され、働くことになった菅原少年は、素直に一生懸命働き、自分の船や家を持つようになった。家族と一緒にいたいから、数か月泊まり込みで漁にでるマグロ漁船の仕事をやめ、連絡船の仕事をするようになったという。動物にも好かれ、人々にも好かれる温かい人柄が、にじみ出てくる。人の役に立つことが、自然にでき、本当に必要とされる優しい人とはこういう人の事をいうのだと思う。
日本には、たくさんの目立たないけど素晴らしい人がある。どんどんこういう人を紹介して欲しい。
文章は大きめで読みやすく、適当にルビもふってあるので、年齢問わず読み味わえる本。児童書だが、是非ともたくさんの大人たちにも読んでもらって、人に優しくなって欲しいと願う。パワハラや職場でのいじめなどにエネルギーを使っていないで、この人のように、他の人の幸せを考えて行動できる大人が増えて欲しい。