クリスマスというとどうしても浮ついた気持ちになりますが、このような本もとても良いかとお薦めできる本です。
両親をなくした浮浪児のジョバンニの特技はお手玉。
いろいろなものを空高く上げてお手玉して見せては、ご褒美をもらって生活していました。
町にきた旅芝居の一座に頼み込んで仲間に入れてもらったジョバンニは腕を磨き、一人立ちして大道芸人として活躍するのですが…。
このお話は、ジョバンニの成功談ではなく、一生の物語でした。
ジョバンニも歳をとり、とうとう自分の得意な演技を失敗するようになります。
芸の出来ないジョバンニはもう人気者ではありません。
落ちぶれたジョバンニは芸をあきらめ故郷のソレントに帰ることにします。
そこで目にしたのは聖フランシスコ教会のクリスマスのミサ。
人が去ってがらんとした教会で、ジョバンニは最後の演技をして息絶えます。
イエスの像は微笑んでジョバンニの投げていた金色の玉を抱いています。
崇高で尊厳のあるジョバンニの一生とクリスマス。
話の中ほど、ジョバンニがまだ人気者でいた時、二人の修道士に食べ物を分け与える場面があります。
芸で人々に幸せをあたえるなら、それは神さまをほめたたえているのと同じことだと伝えられます。
さほど信心深くない私でも、人の生き方を見事に表現している部分だと感銘しました。
しみじみとこの絵本を眺めながら過ごすクリスマスも良いのではないかと思いました。