オオカミはいうまでもなく肉食動物です。
それでも、この絵本のように、肉食をやめて、草食に宗旨変えする人(オオカミですが)もいます。
名前は「ウルフ」さん。
ウルフさんが肉食をやめてやさいを作ろうとしたのには、理由があります。
人(オオカミですが)が自分の性向を変えようとするのは、きっかけがあります。そのきっかけが大きいほど、変化は有効かもしれません。
ウルフさんのように。
ウルフさんの場合、冬になんのえさ(その頃は肉食ですから動物たちです)もとれずに、ひもじい思いをしたことがきっかけになりました。
「いまのままじゃ、だめだ」とやさい畑をつくることにしたのです。
オオカミにとっては一大決心です。
だから、周りの動物たちも興味深げに見ています。
どこかでオオカミの本性に戻るんじゃないかって。でも、ウルフさんはまじめにやさい畑で働きました。
そして、ウルフさんのやさい畑にはトマト、カボチャ、えんどうまめなどたくさんのやさいが実をつけました。
絵本ですから、収穫までの時間ははぶかれています。
本当はやさい作りはがまんと辛抱なんですよね。
だって、種を蒔いたからといって、次の日に実がなるわけではありません。
もし、この絵本を子どもたちと一緒に読むことがあったら、そのことを教えてあげて下さい。
ウルフさんは毎日精を出して働いたということを。
そうすると、ある日、やさい畑を荒らされてウルフさんの気持ちがもっとよくわかるかと思います。
この時が、ウルフさんの肉食動物に戻る一番あぶない瞬間でした。
しかし、ウルフさんは辛抱します。
もっといい方法でやさい畑を荒らすのはよくないと気づかせる方法を見つけたのです。
それは、「育てる」ということの意味でした。
はたけを荒らした動物たちにやさいの種を持ってこさせて、ウルフさんは許します。
種が育つにはたくさんの時間が必要です。
ウルフさんが森の動物たちと仲良くなるのも時間が必要だったのです。
「ウルフさんのやさい畑」はそんな大事なことを教えてくれる、畑になりました。