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図書館あきよしうたさんの声

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なかなかよいと思う 調べ物好きなお子さんには奮起の本になるかも  投稿日:2020/10/31
桃太郎は盗人なのか?
桃太郎は盗人なのか? 著: 倉持 よつば
出版社: 新日本出版社
著者は、「空からのぞいた桃太郎」の帯の「鬼だから殺してもいい?」「あなたはどう思いますか?」を読んで、桃太郎こそが悪者ではないかと衝撃を受ける。解説には福沢諭吉が「桃太郎は盗人だ」と非難したとも書かれている。「おにたのぼうし」や「わにのおじいさんのたからもの」「泣いた赤鬼」に出てくる鬼は、とてもいい鬼だ。もしかしたら、桃太郎に出てくる鬼も、本当は人間に悪さなんかしていなかったんじゃないかと思い、どうして桃太郎は盗人だと言われているのか、どうして鬼はいつも悪いと決めつけられているのか、調べることにした。

手始めに、「空からのぞいた桃太郎」で桃太郎を非難した4人の著書を読み、他にも同様のことが書かれている本がないか調べ、たくさんの桃太郎の本を読み比べ、それでも足りないので絵本読み比べリストを取り寄せ、その本も調べて、昔の桃太郎(古いものは江戸中期、享保年間)も読み、桃太郎の生まれ方と鬼ヶ島へ行った理由の変化を年表にし、鬼とは一体何なのか?を調べ……。大人の私が想像しても気の遠くなるような調査を、当時小学5年生だった著者は(写真から推察するにほとんど夏休み中に)仕上げているのです。



この本を手に取るに至った経緯は不明ですが(なんで図書館に予約したのか、受け取ったときには覚えていなかったし、今も思い出せない……(汗))、読み始めた時、明らかに子供の書いたイラストが貼り付けられていても、家族旅行っぽい姉妹の写真が載っていても、これが当時小学生だった女の子の著作だと気づかず、戸惑いました。それほど濃くて、太くて、完成度が高かったんです。
そして、巻末に実際にコンクールに提出した資料の写真を見て、それがこの本と全く同じ(本の方は活字化されていただけ)だったので、さらに驚かされました。

いやいや、世の中にはすごい子どもさんがいるもんだ。こりゃぁ、私ら大人も「ボーッとして生きてちゃいかんなぁ(古い?)」と思わされる一冊でしたよ。


こんな本を見せたら自信喪失されてしまいそうなので、私は自分の娘には読ませようとは思いませんが、調べ物好きなお子さんには奮起の本になるかも知れませんね。
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なかなかよいと思う 自覚なくヤングケアラーとなっていた少女が、パパとともに、周囲  投稿日:2020/07/18
レモンの図書室 A Library of Lemons
レモンの図書室 A Library of Lemons 作: ジョー コットリル
訳: 杉田 七重

出版社: 小学館
10歳のカリプソは、5年前にママが急逝してから「人に頼らず、心を強く持って生きろ」と言うパパと二人暮らし。亡ママの部屋を自分だけの図書室にし、友人を作らず本を心の支えにしてきた。校正を生業とし、レモンについての本を執筆しているパパは、家事に無頓着で、最低限の家事は彼女がしていた。本好きな転校生メイと意気投合し、物語を共同執筆し始めるが、両親と弟のいるメイの家に遊びに行くたび、カリプソは、自分の家との違いの大きさに気づいていく。カリプソがはじめてメイを自分の家へ招待した日、パパは不在で、彼の書斎の本棚にあるべき亡ママの遺品である本はすべてなくなって、代わりにおびただしい数のレモンが入っていた。

自覚なくヤングケアラーとなっていた少女が、パパとともに、周囲の助けを得て喪失感と向き合い、人とのつながりの大切さに気づいていく物語。






*******ここからはネタバレ*******

ママの急逝と前後して、なぜパパが、レモンに関心を持ったのかは私の読解力では読み取れませんでしたが、著者がレモンを取り上げたのは、そこに欠陥品や困難の意味が含まれているからでしょう。次作の「Jelly(邦題「秘密のノート」)」が、不安の象徴だったのと同じです。
エピローグで、みんなで仲良くレモネードを飲むシーンで上がりというわけですね。



愛した人を失った悲しみが大きすぎて、人とのつながりを恐れるようになってしまったパパが、娘にもそれを要求する。悲しみを抑えるために感情に封をし、その結果、喜びや楽しさを感じることも減っていく。
人とのつながりを排除してひたすら「強さ」を求めるパパが、実は一番弱い存在だったという、大人実に情けない物語です。

カリプソが争い事を目にしたくない理由がわかりませんでした。両親は良好な関係だったでしょうし、あのパパなら彼女に声を荒げることもなかったでしょうから。


メイの両親の懐の大きさに驚かされます。カリプソの家と対比するために描かれているのでしょうが、いくら娘の親友だからって、それで壊れた家庭のパパの面倒まで見られるものではありません。
ただ、カーテンにする生地を選んでと渡した布を汚してしまったとき、「これはママのお気に入りの一枚で、なにか特別なものをつくるときのためにとってあったの。もうもとにはもどらない」とがっかりする場面。いや、それならはじめから、カーテン地にしてもいいわけじゃなかったんじゃん、と思いましたよ。

レモン置き場となったパパの書斎で、腐ったレモンを投げつけたり、物置の裏に置き去りにされていた遺品の本を救い出して、カビで黒くなっていたものを書斎で乾かしたり、いいんですけど、カビは体に良くないから、特に1階の日当たりの悪いパパの部屋に置いておくと、パパの健康がますます損なわれてしまうかも知れませんよ。

パパの様子がおかしいと気づいたカリプソとメイが、では「正常」とはなにか調べる場面があります。少数派は異常なのか?がんで死ぬ人は正常なのか?正しい判断基準はないのか?そのうちに心理学用語としての「正常」に行き当たりますが、これだとDSMにまで話が行ってしまいますね。彼女のパパの場合は、ちょっとした疲れのようにも見えますが、<大人を世話する子どもの会>で、カウンセリングを受け続けるととことん落ち込んでいくと言われるところは気になります。カウンセリング手法がおかしいんじゃないのかな?


原作の表紙絵は、レモンの木の下で本を読んでいる絵。この作品の右上に突き出ている腕が持っている花は何なんだろう?レモンの花でもタンポポでも、メイの家の庭のバラでもないですよね。読み逃したのか?私にはわかりませんでした。


主人公は10歳。でも、こんな不安定に崩壊した家庭の話は、中学年の子にはきつすぎるのではないかと思います。しっかりした高学年以上にオススメします。
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なかなかよいと思う 片耳の難聴に悩みながらも、それを機会に聴覚障害者の世界を知り  投稿日:2020/06/04
蝶の羽ばたき、その先へ
蝶の羽ばたき、その先へ 作: 森埜 こみち
出版社: 小峰書店
中学2年の始業式の朝、結の耳鳴りが始まった。一月経っても消えないので、母に告げ病院に行くと突発性難聴と診断される。病院を替えながら2ヶ月治療に通ったものの、回復は難しいと診断される。友人にも伝えられぬまま、不自由さと疎外感と不安に押しつぶされそうだった彼女は、公園で楽しそうに手話会話する姿を見て、関心を持ち、サークルに見学に行く。そこで突発性失聴の今日子と出会い、彼女の理解とたくましさに救われるのだった。

片耳の難聴に悩みながらも、それを機会に聴覚障害者の世界を知り、成長する少女の姿を描く物語。






*******ここからはネタバレ*******

YA世代の本には設定がとても複雑なものが多いですが、この本は実にシンプル。主人公の悩みは自らの難聴に対する不安とそれに伴う人間関係。
それだけに前半の、難聴が回復不可能と診断されるまでの過程に胸が痛みます。

反面、もう治らないとわかった後の悩みは人間関係で、傍目からはわかりにくいし、自分でも何をどうしてもらったらいいのかわからないもどかしさが伝わってきます。

聴覚障害者の世界を知った後の彼女は、非常にたくましくなって、理解者を得ることの大きさがわかります。



シンプルで、かつ、聴覚障害者の教科書みたいなところもあって、物語としては物足りないかも知れませんが、主人公は中学生だし、私は、こういうのもアリじゃないかなって思います。
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【連載】絵本ナビ編集長イソザキの「あたらしい絵本大賞ってなに?」

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