世界26か国の食べものを紹介した、楽しい大判絵本!
絵本紹介
2023.06.22
たんぽぽの綿毛はどこまでとんでいくのかな。小さな女の子ぽぽんは、犬のぽんたに言います。「いっしょにつくろう、たんぽぽのふね!」 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『たんぽぽのふね』。大人から子どもまで、夢がふくらむこの絵本。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
たんぽぽの花の上で絵を描いているのは、ぽぽん。小さな小さな女の子です。隣にいる小さな犬は、ぽんた。ふたりは仲良く暮らしていました。ある日、ぽぽんは思います。
「たんぽぽの わたげは どこに とんで いくのかな。
みにいきたいな」
そこで、スケッチブックにどんぐりの帽子とたんぽぽの綿毛でできた空とぶ船の絵を描き、ぽぽんとぽんたは本当に作ってしまいます。
「わぁ。すごい!
きっと とおくまで とぶよ」
ふわっと飛んだ船でしたが、あっという間に地面に落ちてしまいます。すると、それを見ていた小さなうさぎや動物たちが、たんぽぽの森に連れて行ってくれました。今度はみんなが乗れるくらい大きな空とぶ船を作ります。ひとつひとつ運んできた綿毛を丁寧につけていき、出来上がった船は、それはそれは立派で……。
ふわりふわりと浮かぶたんぽぽの綿毛に魅せられ、みちびかれていく幻想的な物語。私たち読者がまず惹きつけられてしまうのは、繊細な柔らかな線で描かれるたんぽぽの綿毛そのもの。花のように咲く綿毛、小さな女の子が手に取った一本の綿毛、そして船となって大きな白い雲のように飛んでいく綿毛。どの場面も繰り返し眺めたくなる美しさです。
作者は長野県・安曇野出身の絵本作家まるやまあやこさん。学生時代に作った本物のたんぽぽの綿毛を素材として使った立体作品をもとに創作された作品なのだそう。2007年に新風舎から刊行されたものの、長らく絶版となっていたものが、この度一部文章を修正、デザインも新たに、新しい『たんぽぽのふね』として私たちの手に届くことに。
自分が小さくなって近くで見てみたらどんな世界だろう……そんな空想を実現させてしまったのがこの絵本。春の優しい木漏れ日を浴び、心地よい風に吹かれて飛んでいく。まるで、うとうとお昼寝の最中に見る夢のような景色です。読み終わった後の余韻まで、たっぷりじっくり楽しんでくださいね。
絵本の世界が見せてくれるもの
ふわりふわりと飛んでいくたんぽぽの綿毛を見たことがある方なら、誰でも一度くらいは思うはず。「どこまでとんでいくんだろう」。けれど、実際に綿毛を束ねて、自分ごと一緒に飛んでいってみたい!……なんて思いつくのが作家さんのすごいところ。さらにその空想の世界を、こんな風に絵本の中で実現させてしまうのです。たくさんの動物を乗せて、空にふわふわと浮かぶ白いたんぽぽの船を眺めながら、「絵本があってよかったな」と、思わずつぶやいてしまうのです。
この書籍を作った人
1982年長野県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。『たんぽぽのふね』(新風舎)で絵本デビュー。おもな絵本の仕事に『ひとりでおとまり』(福音館書店)、『ゆきのひのいえで』(「おはなしプーカ」学研)など。絵を担当した絵本の仕事に『わたしのくつ』(ポプラ社)、『おかしのくにのバレリーナ』(教育画劇)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。