箱のなかにはいっているのは?!
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絵本紹介
2021.06.08
ゆうちゃん、いつもねたふりするの。なぜかって言うとね……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信を持っておすすめする「NEXTプラチナブック」の中から今回ご紹介するのは『ねたふりゆうちゃん』。注目の新人作家阿部結さんが、ご自身の子どもの頃の体験を思い出しながら、描かれたというこの絵本。どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
あらあら、また今日もゆうちゃんが「ねたふり」をしていますよ。机の上でお絵描きをしている途中かな。そのまんま、机の上に頭を乗せて、目を閉じて。場所だって色々です。リビングの椅子の上のことだってあるし、階段やトイレの中でだって。ゆうちゃんは、上手に「ねたふり」をします。なぜかっていうとね。
「ねたふり」をしていると、いつもお母さんが来て、ふわっと抱っこして、お布団にいれてくれるのです。それがとっても気持ちよくて、嬉しくて。ある日、お母さんと公園に行ったゆうちゃんは、ここでもやっぱり。だけど、お母さんはなかなか来てくれなくて……。
ああ、ゆうちゃんのほっぺはほんのりピンク。なんて愛らしいのでしょう。じっと待っている時も、目を閉じたまま抱っこされている時も、無事にお布団に運ばれていった時も。こんなに幸せそうな顔を見てしまったら、お母さんも何回だって運んじゃうはずです。
どこを切り取っても、ずっと微笑ましく、ふんわり柔らかなこの絵本。作者は注目の新人絵本作家・阿部結さんです。
そこにあるのは、お母さんとゆうちゃんのふたりだけの時間。可愛らしさの裏に、ほんのり漂う心細さやさみしい気持ち。ゆうちゃんのそんな気持ちを、おかあさんはそっと優しく拾いあげます。ゆうちゃんのいい顔を眺めながら、なんだか自分が小さい頃の事も思い出したりして。そうだ、お母さんだって1回くらい……。
作者の阿部結さんご自身が子どもの頃、「ねたふりしたまま子ども部屋に運ばれるのが好きだった」というご自身の体験を思い出したことがきっかけでつくられたそうです。甘えたい、かまってほしいという思いもあったのかもしれませんよね。
子どもたちにとっては自分ごと
なんといっても、ゆうちゃんがお母さんを待ちながら、好きな場所で、好きなタイミングで、上手に「ねたふり」をしているその姿の愛らしさといったら! ほんのちょっぴりの期待とわがままのこもった表情は、大人にはただただ可愛らしくても、子どもたちにとっては自分ごと。「ちゃんと来てくれるかな……」だからこそ、後半の出来事に心が大きく揺れてしまうのです。大丈夫、最後にギュっとしてあげたあとに、親子で心置きなくお昼寝時間を満喫してくださいね。
この書籍を作った人
1986年、宮城県気仙沼市生まれ。美術教師であった画家の父の影響で、幼少のころから絵に親しんで育つ。パレットクラブスクール、あとさき塾にてイラストレーションと絵本制作を学ぶ。書籍装画や演劇の宣伝美術などを数多く手掛ける。イラストレーションの仕事に、『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』(佐藤健寿/ 著 朝日新聞出版)、『サラリーマンのごちそう帖』(藤枝暁生/著 朝日新聞出版)、絵本の作品に『あいたいな』(ひだまり舎)などがある。東京都在住。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。