どうぶつのわかっていること・わかっていないこと(小学館集英社プロダクション)
「答えのない問いに向き合う力」をはぐくむ新感覚の絵本
- 全ページ
- ためしよみ
絵本紹介
2025.03.28
今から400年ほど前、大阪城にお城をつくるため、この島からたくさんの石が運ばれていき……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『巨石運搬 海をこえて大阪城へ』。観音ページを使った、迫力ある場面が続くこの絵本、いったいどんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
山の奥深く、大きな岩を見あげて石工は言います。
「こりゃあ、いい石が とれそうだ」
ページをめくると……
迫力の観音開き! 足場が組まれ、石を運ぶための道がつくられていく様子が一目でわかります。
巨大な石を切り出し、人の力だけで海を越え、大阪城まで運び出す。この風変わりな長い旅路の絵本をつくられたのは、綿密な取材のもとにあらゆる仕事場や乗り物を迫力の絵で描きだす絵本作家鎌田歩さん。本作でも小豆島で実際に残っている石切り場を訪れ、屏風絵や絵巻、写真集など様々な資料から雰囲気を感じ取って制作されたのだそう。
冒頭から登場するそびえ立つような高さの岩に目を奪われると、観音開きのしかけで表現される石が割れる瞬間に興奮し、お祭りのような賑やかさで運ばれていく様子に心躍り、巨大な石が船に乗せられる瞬間に「ほおーー」と声が出る。
「石を砕き、人の力で運ぶ」
この作業のシンプルな面白さ、凄まじさに夢中になってしまうのです。危険で過酷な作業だったに違いないという想像を見事に裏切ってくれるかのように、村人たちが一体となって仕事を成し遂げる気持ち良さが伝わってきます。
歴史の主役は“普通の人々”
大阪城の石垣には巨石がたくさんあり、一番大きなもので高さ5.5メートル、幅11.7メートルにもなるのだとか。そのひとつひとつの石がたどってきた道のりに関わってきたのは、高度な技術を持った技術者たちであり、たくさんの“普通の人”たちなのです。次にお城を訪れた時には、そんなひとりひとりの様々な姿を想像せずにはいられなくなるのでしょうね。そして、もっと歴史が身近に感じられるはずです。
この書籍を作った人
1969年東京生まれ。主な絵本作品に、『巨大空港』、『飛行機しゅっぱつ!』『新幹線しゅっぱつ!』『路線バスしゅっぱつ!』(以上、福音館書店)、『はこぶ』、『みつけた!こんちゅう』(ともに教育画劇)、『そらのうえのそうでんせん』『まよなかのせんろ』(ともにアリス館)、『しゅつどう!しょうぼうたい』(金の星社)、「はしる!新幹線」シリーズ(PHP研究所)、『ヘリコプターのぷるたくん』『ちかてつのぎんちゃん』(ともに小学館)ほか多数。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。