読めば読むほど虜になる、それが「バムとケロ」シリーズ。子どもから大人まで多くのファンが待ち焦がれていた12年ぶりの新作がついに出版されることになりました!『バムとケロのもりのこや』…いったいどんな内容なのでしょう。著者の島田ゆかさんはカナダにお住まいですが、先日帰国された際、絵本ナビの読者のためにお時間をとってくださいました。新作の楽しみどころをお聞きしたり、島田ゆかさんの好きなもの、シリーズのなかで不思議に思ったことなど、いろんなお話をきかせていただきました!
ぽかぽかあたたかい木曜日。近くの森にきいちごをつみにいったら、
つるくさに覆われた古い小屋を見つけた。
誰も住んでいないので、2人の秘密の小屋にしよう!
まずは修理と掃除をして、それから…
●新作『バムとケロのもりのこや』に初めて登場するのは…?
─── 「もりのこや」が舞台になったきっかけはなんですか。
「こや」が先じゃなくて、「ソレちゃん」という新しいキャラクターが先だったんです。最初は大工さんという設定だったので、大工仕事をさせられるものは…と考えた時に「小屋の修理」というのがいいかなと。ソレちゃんは大工仕事だけでなくパンを焼くのも上手な何でも屋になりましたが、職人なので、とにかくもくもくと働く。バムとケロの家に朝早く来て、まずは朝食を用意したり…。実は6年ほど前に実家を改築した時に、職人さんがいっぱいいらしたんです。その人たちの仕事ぶりがかっこよくて面白くって。仕事するときはしっかりやる、おやつもまたちゃんと一所懸命食べる(笑)。職人さんてソレちゃんのように、朝働き出すのが早いんです。さすがに夜明け前ではなかったですが、朝8時前には既に現場に来て待っていたりして。ずっと頭から離れなかったその人たちを「ソレちゃん」の中にぎゅーっと凝縮しました。
─── 仕事をするときはサングラス、でもサングラスをとると目がとても可愛い!そんなギャップも魅力のソレちゃんですが、どんな生き物ですか?
ソレノドンという動物がいるんです。私も詳しくは調べていないんですが、アリクイの仲間のようです。分厚い大図典に小さく「ハイチソレノドン」の写真が載っていて、なんだか邪悪な顔をしていたんですけど、それが妙に可愛くて忘れられなかったんですね。本当はソレちゃんの目は逆三角形の邪悪な目にしたかったんですけど…。描いているうちに可愛らしい目になっちゃいました。
●「バムとケロ」シリーズのこと、島田ゆかさんのこと
─── なぜこの種類の犬になったんですか?
1920年代にイギリスで流行った『ボンゾ』という犬の漫画があるんですが、初めてロンドンに行った時そのボンゾの人形に出会いました。ちょっと気持ちわるい顔をしたシワシワのおじさんっていう感じ(笑)の犬。こんな可愛くないのもありなんだなと。それで私もシワシワの犬が描いてみたいなと思ったんです。最初は「ぶーちゃん」(『ぶーちゃんとおにいちゃん』)みたいな犬だったんですけど、「気持ちわるい」とか「可愛くなさすぎる」とあまり評判が良くなくて(苦笑)。それで変更して描いたのがブルテリアのバムでした。 「これなら大丈夫」「こっちのほうがまだいい」と言われたんですね。私には違いがあまりよくわかりませんが…(笑)。
─── (笑)。今ではぶーちゃんもバムもすっかり人気者ですよね。おおらかで包容力のあるバムと子どもそのもののケロ。対照的な性格が物語を広げているように感じます。最初からそんな設定だったんですか。
特に正反対の性格にしようと思って描いたわけではなく、私自身は今も意識はしていません。私の中では二人とも大人じゃないので、 保護者と子どもというような関係ではなく、対等な友だち同士というか。だから『バムとケロのにちようび』では、いつも面倒見のいいバムの方がケロにシッカロールをはたいてもらうという場面もあります。他のキャラクターたちも、特に性格づけをしているつもりはないんですけど、絵本の中で色々な事をやらせているうちに、自然に性格が出てくるみたいです。
─── 『バムとケロのにちようび』のドーナツの場面が大好きな子どもたちに「ドーナツつくって!」と言われるというお母さんたちの話を、よく聞きます。新作のなかでも、ケロちゃんが古いドーナツやクッキーを見つけて食べようとしちゃう。しょうがないから掃除の前におやつをという場面がとても好きなんですが…島田さんはおやつをよく作りますか?
あまり作らないんです…。私は休憩が好きなんですね。何かやる前に「まずは休んでから」って感じです。やったあとに休めばいいのにね(笑)。昔からドーナツが好きで、子どもの頃に一度自分でドーナツを揚げたのですが、油があちこちに飛び散り怖い思いをしたんです。その時の経験から、バムとケロが揚げる時にはゴーグルや手袋などの重装備を。さすがにあんな山盛りのドーナツを作るのは大変ですよね(笑)。
─── 飛行機や工具もよく登場しますが、お好きなんですか。
『バムとケロのそらのたび』に登場する工具箱は、イギリスに旅行に行った時に訪れた英国空軍の施設で見たものです。そこでは古い飛行機を修理していて、ああいう三角形の工具箱を使っていました。あれいいな…と、さっそく絵本に登場させることに。実際の工具箱にはおやつ用テーブルは付いていませんでしたが…。
─── ほかにもお風呂の場面とか、必ず出てくる場面がありますね。たとえば島田さんが一日生活しているなかで、至福の瞬間は…?
晩ごはんを食べ終わった後でしょうか。これ以上何もしなくていい時間。実際はそのあとに仕事をする事もよくあるのですが、とりあえず一日の仕事が終わった…とゆっくりしている時間がいちばん好きです。
─── 公式サイトのブログ日記ではよくアンティークのことを書いてらっしゃいますが、島田さんのお部屋にもじっさいにあるのでしょうか。バムとケロの部屋や雑貨をあれこれ描くのは楽しいですか?
あまり大きなものはありませんが、小さなものは結構いっぱいあります。高くて買えなかったものは、時々絵本に登場させたりします。描くのはタダですからね(笑)。バムとケロの家が理想の家かというと、そうではないです。自分が使うというよりは、バムとケロが使う家と考えて描いているので、私があそこに住みたいかと聞かれたら、う〜ん…って感じ(笑)。理想の家というのは特に無いですが、整然とし過ぎてなくて、ごちゃごちゃしているようで実は秩序がある、という家が好きですね。
─── バムとケロはおうちにいることも多いですが、ガラゴ(『かばんうりのガラゴ』『うちにかえったガラゴ』の主人公)は旅するかばんやさん。島田さん自身は、お出かけと、家にいるのとどちらが好きですか?
家にいるほうが好きです。バムとケロは私に似ているのかも(笑)。 食べるとすぐに眠くなってしまうところとか…。意識していなかったのですが、私の絵本の中では必ず主人公たちが昼寝や居眠りをしちゃうんですよね。これも私の生活が反映されているのかしら…?