●デザイナーになれるお絵かきブック『デザインワークブック』
─── 火そのものが絵本になってしまった、という事も驚きですが、風と土がどんなおはなしなのか、今からすごく楽しみです!
クマで音の絵本を作ろうと思ったり、四大元素を絵本にしたり、新井さんの作品は発想が非常にユニークだと思うのですが、絵本のアイディアはどこから生まれてくるんですか?
これはあまり言っていいのか分からないんですが…。
僕の中にアイディアの国というのがあるんです。そこに行くと、バス停みたいなところで作品達が沢山待っているんですよ。
僕はそこで出会った作品を、誰にでも手に取って楽しめる実物の絵本の形に具現化する作業をしているんです。
以前はそんなに頻繁にいけなかったんですが、一時期1日1アイディアを出すって自分で決めていた時期があって、それからは自由に行き来できるようになりました(笑)。
そんなアイディアの国で出会った作品候補達が常に10冊ぐらい僕の中にあって、実際に進行しているのがそれ以外に10冊ぐらいあります。
─── そんなにあるんですか!
はい。
今は、50冊を目標に絵本を作りたいなって思っているんです。
それと、先ほど話した2人の娘との出来事が作品のヒントになることが多いですね。
今、うちは上の子が6歳で下の子が4歳なんですが、僕は基本的に家が仕事場なので、お迎えや絵本の読み聞かせなどの育児は僕が担当しています。なので、子どもが興味のあるものとか、好きなものとか、色々チェックして絵本を作っています。
『しゅっしゅぽっぽ』や『ころころぽーん』は子どもとの関わりから生まれた作品ですね。
最近では自分の子以外にも、子どもの友達と一緒に遊んだり、近くの保育園に読み聞かせに行ったりと、より多くの子ども達と出会うことが多くなりました。
そうした沢山の子どもとの関わり中で、ある時、子どもってゼロから何かを作り出すのが苦手だなぁ…ということに気づいたんです。
─── そうなんですか?
子どもってすごく想像力が豊かなような気がしているのですが…。
何かきっかけを与えてあげると、ビックリするような発想をするのですが、真っ白な紙に「何でもいいから描いてごらん」って言うと、なかなか描き出せないんですよ。
でも、例えば、カメラのレンズだけを描いて「ここに好きなカメラを描こう!」って言うと、レンズの周りにクマの絵を描いて、「クマさんカメラ!」とか(笑)。「なに、その発想!」ってビックリするような作品を描いてくる。
そんな、子どもが絵を描くきっかけとなるアイディアを沢山集めた本を作りたいと思ったところから、この『デザインワークブック』(コクヨS&T)が生まれました。
─── なるほど、そう言われてみるとわかりやすいですね。これもオシャレで可愛い作品!
それぞれ絵を描くページの下に「デザイナー」「コンセプト」と書く欄があるのも、プロのデザイナーやイラストレーターになった気分が味わえますね。
子どもってお仕事体験、好きですよね。大人になった感じがするのも嬉しいんじゃないかなぁ…って思います。
あ、左のページに小さく載ってるのは、僕のデザイン画です(笑)。
これは、「こんなアイディアもあるよ」って絵を描く楽しみを垣間見せつつ、子どもに自分なりの絵を自由に描いて良いんだよって感じてほしいと思って載せました。
それから、これ『いろいろばあ!』。
これは、あるパーティで会った編集者さんと、「一緒に色の絵本を作りたいね」って話が弾んだことで誕生した作品です。
─── 打ち合わせ以外でも絵本の企画がスタートすることもあるんですね!
はい。でもそこからが大変でした…(笑)。
僕は最初、いろんな色が出てきて1つの絵を完成させていく、ストーリーっぽい絵本を考えて、編集者さんにラフを見せたんです。でも、「私が新井さんに求めているのはこういうのじゃなくて…。もっと突き抜けたものを作ってください!」って言われてしまって…。
僕が作る「突き抜けたもの」って何だろうって考えたんです。
その時、以前『ころころぽーん』の担当編集者さんから「ものを膨らませて作品を作る作家さんはいっぱいいるけれど、新井さんはものをそぎ落として作品を魅せる力がある。そこを頑張りなさい」といわれたことを思い出したんです。
それで、「やってやるぞ…」と、そぎ落として、そぎ落として出来上がったのがこの作品です。
─── すごくシンプルな内容なんですが、赤ちゃんが「ばあ!」って絵の具が出てくるところで、大喜びしそうな作品ですね。
僕、赤ちゃんとお母さんが一緒に笑っているところがすごく好きなんです。
例えば本屋さんなんかで赤ちゃんとお母さんが絵本を選んでいるところなんて、ステキですよね。この絵本も、赤ちゃんにケラケラ笑ってほしいなと思って作りました。