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《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2011.09.21

蜂飼耳さん、牧野千穂さん
『うきわねこ』インタビュー

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5年の歳月をかけて作品が完成

『うきわねこ』のラフ
▲牧野さんが描いた『うきわねこ』のラフ。1枚絵から本になっているものまで。これも全体のラフの、ほんの一部だそうです!

牧野:今日は『うきわねこ』のラフの一部をお持ちしました。

─── スゴイ!こんなに沢山ラフを描かれたんですね。

蜂飼:これだけ見ても素敵な絵なのに、自分の中のえびお像が動き出すまで、納得がいくまで何度もやり直しをされたと聞いて、すごく感動したんです。

─── 牧野さんは今までも、イラストや挿絵のお仕事をされてますよね。絵本の描き方とはやはり違いましたか?

牧野 千穂さん 牧野:だいぶ違いますね…。
最初のラフでは、ほとんど見渡すように退いた視線で場面を描いているんですよ。風景の中のひとつのパーツとして、えびおがいるんです。でも、それでは読者は物語の中に入り込んでいけない。「えびおと一緒に空を飛んでいる」感覚が、見ただけで伝わる絵じゃないとダメだと思ったんです。

「だとしたら、まずは主人公である"えびお"をしっかりと描かなくちゃ!」と思って、編集者の方と相談しながら、「"えびお"はきっと人間で言うと5、6歳くらいだよね…」、「おじいちゃんからの手紙を誰にも見せずに、満月を待つような子だから、わりと寡黙で…でも弱虫じゃなくてしっかりと意志を持っている子だよね…」とキャラクターを作り上げていきました。
その中で表紙のうきわを持って立っているネコの絵が生まれて、編集さんから「この子が"えびお"だね」と言ってもらえたんです。
もう、本当に嬉しくって。「やっとスタート地点に立てた!」って、改めてラフを描き直しました。

─── このえびおの姿、ひとつひとつがどれも本当に可愛くて…。誰かモデルがいるんじゃないか…と思っているんですが。

牧野:分かりますか(笑)。直接、えびおのハチワレ柄のモデルとかではないんですけれど、このおはなしをいただいて2年くらい経ったころに、ネコを飼い始めたんですよ(笑)。それまでもネコ好きではあったんですが、いつも外にいるネコを遠くから見たりしているだけだったんです。

─── ネコを飼うようになって、えびおのタッチも変わりましたか?

牧野:変わりましたね〜。外ネコがモデルだったときのえびおは、かなりシュッとした端正な顔立ちなのですが、うちにネコが来てからは急にあどけない表情なんですよ(笑)。肉球までさわれるようになったから、色んなポーズとか角度とか…すごく観察できましたね。

蜂飼:空を飛んでいる場面のしっぽとか、見てほしいですよね(笑)。もし、牧野さんがネコを描いたら、こうなるだろうなぁ…と想像していたのですが、それ以上に動きが変化に富んでいて…。しっぽがブワっとふくらんでいたり、ピーンと張っていたり、本当に表情豊かです。 牧野さんの「梅(うめ)ちゃん」と「東風(こち)くん」
▲牧野さんの「梅(うめ)ちゃん」と「東風(こち)くん」。えびおの模様は2匹を合わせて生まれました。

─── 蜂飼さんもネコを飼っているんですか?

蜂飼:実は8月に亡くなっちゃったんですよ。老衰と夏バテで…。淡々とした感じでそんなに寄り添ってくれるタイプでもなかったんですけど、15年くらい一緒に暮らしていました。

─── それは悲しいですね…。

蜂飼:でも、この絵本が完成したのが7月なので、えびおはその子の入れ替わりの様な感じがしてますね。
「うきわねこ」原画
▲原画を見せていただきました。息を飲むほどの美しさです!

─── この原画が、本当に繊細で、月の光の柔らかさや海の深さを感じるのですが、絵を描いているときに特に印象に残っている場面、難しかったところはありますか?

牧野:この恐竜とすれ違う青い夜の場面と、最後のえびおが家に帰る場面は構図がすぐに浮かんできました。蜂飼さんが私の絵をちゃんと見てくださっていて、得意そうな場面を選んでくれたんだろうなぁ…って思いました(笑)。

蜂飼:はい(笑)。それと、ネコが飛んでいくので、何か大きいものとすれ違ってほしいって思ったんです。空想的なものとして恐竜が出てきて、現実的なものとしてヘリコプターを出しました。

牧野:文章を読んだときに思ったんですが、この恐竜とヘリコプターを同じ場面に出すという発想は私の中にはないものなんですよ。だからそこは私のオリジナルではなくて、新しいスパイスを加えられる、新鮮なおもしろさを感じました。
難しかったのは、えびおが空でおじいちゃんと出会うシーン。最初この月は、もっとずっと小さかったんですよ。でも今回、本の装丁も手がけてくださった装幀家の坂川栄治さんから、「月はもっと大きくしようよ!」と言われて、2匹を覆うほど大きくしました。

「うきわねこ」月

そこで改めて、「絵本の絵を描く」ということがすんなりと体の中に入ってきた感じがしました。場面の中で、みせるポイントと退くポイントの差し引きが分かったというか…。その後に描いた魚釣りの場面や釣った魚を食べる場面では迫力を出したくなって、どんどん大胆に描くことができました。

─── この魚を食べているえびおとおじいちゃんが、ネコそのものの姿で面白いんですよね。それまでは結構澄ましておむすびを食べていたりするのに…(笑)。

蜂飼:野生そのものに戻ってますよね(笑)。

─── 蜂飼さんは『うきわねこ』の文章を書かれるときに、気をつけていたことなどはありますか?

蜂飼:絵で描かれている要素を文章から削っていく作業はどの作品でもしていますね。それと、絵本として読みやすいよう、言葉が多いと感じたところは削るようにしています。

牧野:それは、私にもありますね。テキストで「お母さんがきょろりと目を回した」って書いてあると「あ、これはもう描かなくても良いんだな」と(笑)。

─── お二人で一緒に打ち合わせをしたり、直接やりとりをすることはなかったんですか?

牧野:直接やり取りはしていないんですよね。

蜂飼:直接っていうのは言葉でのやり取りになっちゃいますよね。私にとって、牧野さんのお仕事は、絵を通してしか分からないんじゃないかっていう思いがあって、直接連絡とかはしませんでしたね。

牧野:ただ、原稿をいただいて、3年目か4年目経ったときに1度、蜂飼さんから「大丈夫ですか?書き直しましょうか?」ってメールが来たことがありました(笑)。

蜂飼:違いますよ!(笑)「ネコじゃないものにしましょうか?」ってメールを送ったんですよ。その頃はまだ、えびおのイメージを迷われている段階で、もしかしたら私が牧野さんの絵で感じたことが違うかなぁ…って。ネコじゃない違う動物にすればスムーズに進められるのであれば、書き直しますよ…ってことをお送りしたんです。

牧野:そのメールをもらったときは、二の句が告げない状態になりましたね(笑)。私は「気に入ってます」っていうことを、絵で返さないといけない訳ですよ。だって私がいくら「気に入ってます」って言葉で言っても…絵が上がってこないと伝わらないですよね…。

蜂飼耳さん 蜂飼:でも直接メールしたのはその1回きりで、あとは、全て作品を通してやり取りをしていきました。それは言い換えると、作家と画家のやり取りというよりも、絵と言葉がやり取りしている感覚なんですよね。絵と言葉が対話してひとつの作品を作っていく…それが絵本という存在の力であり、魅力だとこの作品を通して実感できました。

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蜂飼 耳

  • 詩人・作家。1974年、神奈川県生まれ。
  • 詩を中心に、小説、エッセイ、児童文学など、さまざまなジャンルで活躍。
  • 2000年、詩集『いまにもうるおっていく陣地』(紫陽社)で第5回中原中也賞、2006年、詩集『食うものは食われる夜』(思潮社)で第56回芸術選奨新人賞受賞。主な著書に、詩集『隠す葉』(思潮社)、エッセイ『孔雀の羽の目がみてる』、『空を引き寄せる石』(ともに白泉社)、『秘密のおこない』(毎日新聞社)、小説『紅水晶』(講談社)、『転身』(集英社)、絵本『ひとりぐらしののぞみさん』(絵・大野八生/径書房)、「イソップ絵本」全5巻(岩崎書店)、童話『のろのろひつじとせかせかひつじ』(絵・ミヤハラヨウコ/理論社)などがある。

牧野 千穂

  • 画家。1965年、福岡県生まれ。
  • ステーショナリーメーカーの商品企画デザイナーを経て画家となる。パステル画で描きだされる独特の世界にはファンが多く、日本文学から海外文学、児童書まで、書籍の装画や挿絵を数多く手がけている。2009年、「魔法使いの弟子たち」(作・井上夢人)他で第40回講談社出版文化賞受賞。主な装画の仕事に、『34丁目の奇跡』(作・ヴァレンタイン・デイヴィス/あすなろ書房)、『宇宙への秘密の鍵』(作・ルーシー&スティーヴン・ホーキング/岩崎書店)、児童書に『犬と私の10の約束 バニラとみもの物語』(文・さとうまきこ/ポプラ社)などがある。

作品紹介

うきわねこ
作:蜂飼 耳
絵:牧野 千穂
出版社:ブロンズ新社


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