●海外絵本への憧れから、絵本作家を目指して…
─── 絵本作家になったきっかけは海外絵本ということですか?
そう。僕は最初、グラフィックデザイナーとしてデザイン事務所に就職しました。僕がいたデザイン事務所は、カメラ会社からの受注が多くて、カメラのパッケージやパンフレットのデザインをしていたんだよね。そのうち、僕がデザインしたパッケージを手にした人は、パッケージがほしいんじゃなく、カメラが欲しかったんだ…ということに気がついた。…と同時に僕は、自分の作ったものが商品として扱われる世界に身を置きたくなったんです。
ちょうどその頃、日本橋丸善で「世界絵本原画展」がやっていて。それは、海外の絵本の原画を展示して、その絵本を販売するという…当時としては画期的なイベントで、気になって見に行ったのね。そこでものすごい衝撃を受けたんです。「これは僕のイメージしていた世界じゃん!」って。
─── そこで初めて絵本に出会ったんですね。それまでに絵本に接する機会などはありましたか?
まったく絵本って見たことがなかった。子どもの頃は田舎で絵本なんてほとんどなかったし、児童書の売り場にも行ったことがなかったんだよ。
でも、「絵本をやっていくんだ」って決めてからは海外の絵本を買い漁って、それを何度も模写して勉強しました。当時の僕らの初任給が1万2000円くらいだったんだけど、海外絵本1冊は4000円くらいで、3冊買えばなくなっちゃう。それでも一気に絵本の世界にのめり込んでいきました。
絵本に必要なデッサンを学ぶために武蔵野美術大学美術科の通信教育に入ったのもこの頃。今は専門学校で絵本を教えてくれるけど、昔はなかったから、大学に通いながらクロッキーやデッサンやって…。あとは全部独学だね。
─── その頃に影響を受けた作家さんはどんな方がいたのですか?
アンドレ・フランソワが好きでしたね。あとブライアン・ワイルドスミス、バーナデット・ワッツ。色使いのきれいな人の絵が好きで模写したね。
─── 日本人の絵本作家ではどんな方が活躍されていたのでしょうか?
ちょうど『ぐりとぐら』が出始めた頃だったから…絵本も初期の頃だよね。いわさきちひろさんや長新太さん、谷内こうたさん達が活躍してて…。
当時から特に人気が高かったのは、村上勉さん。彼と僕は同年代なんだけど、20歳くらいですでにスター的存在だったね。
村上さんには20代の頃に一度、村上さんのお兄さんがやっているデザイン事務所にアルバイトの面接に行ったときお会いしたんだけど、村上勉さんは事務所の机で絵本を描いていたんだよ。
そのときはそこから仕事がなくて、村上さんともそれっきりになってしまったけど、僕が処女作『ふうせんくじら』の出版パーティをしたときに、村上さんも来てくれて、2人で「10年ぶりだね…」って。覚えてくれてたのが嬉しかったなぁ…。
▲初の絵本作品『ふうせんクジラ』。
(こちらは1985年に佼成出版社から出版されたもの。判型が変わり、細部も描き直されているそうです。)
─── それはすごく思い出深い再会ですね…。最初の作品『ふうせんくじら』は、大学を出てすぐに出版されたんですか?
大学は2年で終わって、その後はフリーでデザインの仕事を請けながら絵本作品を作ってたんです。『ふうせんくじら』はラフ絵と見本の絵1枚という状態で、知人に紹介してもらった出版社に持ち込んだの。そうしたら、編集部の人から「面白いから作品を仕上げてください」って言われて。「よし、やってやろう!」って作品に取りかかって、描き終わったらオイルショックがあって、紙と印刷代が暴騰したんで『ふうせんくじら』も出版が無期限延期になって…。
※オイルショック…1970年代に二度あった、原油の供給逼迫および価格高騰と、それに伴う経済混乱のこと
─── オイルショックでそんなことがあったんですか?
そう。その頃その出版社では、同時期に赤羽末吉さんやいわむらかずおさんの作品の出版予定も凍結になって。それが全部差し止めになって…。出版界全体に差し止めが広がったんだよね。
結局、『ふうせんくじら』が出せたのは、それから4年もたってから…。31歳のときでした。
─── 一番最初の作品が出版直前にそんな状況になってしまうなんて…。ショックは大きかったですよね。
そうだね、「やっぱり、この世界はダメなのかな…」って思ったりして。でも、同じ状況に置かれた人は大勢いたから、「まだ大丈夫だ」って自分に言い聞かせましたね。
─── 『ふうせんくじら』を出版した後の反応はどうでしたか?
『ふうせんくじら』が出てから状況が一変して、他の出版社から次々と注文が来ました。書評にも紹介してもらって、どれも「新しい」「モダンで、海外絵本の様」と評価してもらえたりして、嬉しかったね。でも、僕は外国の絵本しか模写してなかったから、海外絵本っぽいのは当然なんだよね…。
今の『ねこざかな』にもこのときの海外絵本影響が着実に生き続けていますよ(笑)。
─── 「ねこざかな」もシリーズを通して、タコやノコギリザメ、トビウオなど色んな海の生き物も登場し、ますます楽しく、にぎやかになっていくと思うと、すごくワクワクします!
ねこざかなは今後どんなところに行くのでしょうか?
一応、南の島にいることにはなってるんだけど、おはなしだからあまり堅苦しく考えずに、色んなことをさせたいと思ってるんだよね。
この後、シロクマを登場させたいとか、クリオネを出したいとか…構想はどんどん広がっています(笑)。
─── どこに行くか、何が出てくるかは乞うご期待!って感じですね(笑)。
最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。
そうですね…。 あ! 毎回しかけを探すのにとっても苦労しているので、面白いポップアップカードがあったら教えてください!(笑)。良いのがあったら採用しますよ〜〜って
─── 私も探してみて良いですか?
もちろん! でも僕、かなりのポップアップカードにチェック入れてるから、なかなかビックリしないと思うよ(笑)
─── ありがとうございました!
<編集後記>

わたなべさんご自身も、とても丁寧におもてなしをしてくださったかと思うと、豪快でユニークなエピソードで笑わせてくださったり。しかけのお話やご家族のお話をされる時はすごく嬉しそうで・・・(笑)。色々な表情を見るたびにどんどん"わたなべゆういちワールド"にひき込まれてしまい、もうすっかり作品共々大ファンになってしまったのでした!
(編集協力:木村春子)