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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  鈴木まもる さん

鳥の巣も絵本も「小さい命が育つ場所」なんです。

─── 絵本と鳥の巣が同じ?…どういう意味でしょうか?

それを説明するには、まず、鳥の巣がどうしてできたかという部分を理解する必要があるのですが…(笑)。例えば鳥が地面に卵を産む鳥の場合、「地面が傾いていたら卵が転がってしまう」と考えて、卵が転がらないように石を置くんですよ。次に「敵が来るかもしれない」と考えると敵の来る方向に石を置く、そうしたら今度は「風が吹くかもしれない」と風の吹く方向に石を置く…。そうやって心配事を全てなくすと、どうなるかというと…。石はキレイな等間隔に並ぶんです。この中で鳥は安心して卵を産む。これがほぼすべての鳥の巣の原理なんです。


▲お菓子を使っての鈴木さんの鳥の巣の説明。授業を受けているようでした(笑)。

─── なるほど、中で暮らすためというより、卵を産むために鳥は巣を作るんですね。

そうです。よく鳥の巣を「鳥の家」だと思っている人がいるんですが、これは家じゃなくてお母さんのお腹の中なんですよ。鳥は「飛ぶ」という進化の過程で身体を軽くしなければならなかった。だから赤ちゃんをお腹の中で育てる代わりに、安全なところに巣を作って赤ちゃんを守るようにしたんです。
鳥が小さい命を育てるために作るのが「巣」。だとしたら、人間の大人が子どもの心が育つために作るのはなんだろう…と考えたとき、それが「絵本」だと思ったんです。
形は全然違うけれど、「小さい命が育つ」という部分では絵本も鳥の巣も同じ。どちらも純粋な行動の結果だと気づいて、「だからこんなにも両方に惹かれたんだ」と納得しましたね。

─── 絵本と巣が同じなんて、今まで考えたことありませんでした。

そうでしょう。僕も「何でこんなに鳥の巣が好きなんだろう?絵本が好きなんだろう…」って山の中で鳥の巣を探していて、ハッと思いついた結論ですから(笑)。

『ベンチがひとつ』では、息子の頬っぺたの感触が甦りました。

『みんなあかちゃんだった』に話を戻すと、最初、企画を持っていったときある出版社からは「読み聞かせにむかないから、うちでは出せない」と却下されたんです。

─── そうなんですか?すごく意外です。

僕は読み聞かせを否定する気は全然ないけれど、絵が小さくて読み聞かせに向かないからダメだ。テレビのお笑い番組のように、すぐ笑わないとダメだ…というのは、表現をすごく狭くしてしまうと思うのです。

─── たしかに、本との出会い方、触れ合い方はもっと多様にあっていいと思いますよね。

基本的に僕には、絵本は親子や子ども1人でゆっくり見てほしいという思いがあるんですよね。僕自身、絵本を1人で見るのが好きだったし、息子にも読んであげて一緒に楽しんだ経験が残っているので。

─── 息子さんにはどんな絵本を読んだのですか?

自分の本も、他の人の本も、面白いと思った本はかなり読みましたね。
僕と妻の作品に『ベンチがひとつ』(講談社)という絵本があるんですが、長いこと絶版で、最近復刊されたんです。これもあまり読み聞かせ向きじゃない絵が小さい作品なんですよ(笑)。ただ、復刊された絵本を手に取ったとき、息子を膝に乗せて読んだ、膝の重みや頬っぺたの感触なんかがわーっと甦ってきて、非常に懐かしい気持ちになりましたね(笑)。

─── 素敵ですね!そんな追体験、してみたいです。
今、若いお母さんの中には子どもにどんな絵本を読ませたらいいか、悩んでいる方もいると思うのですが、鈴木さんから何かアドバイスをするとしたら?

アドバイスなんて、立派なことはできないけれど…、親が一緒に絵本を読んでくれれば、子どもはそれで十分満足していると思いますよ(笑)。同じ本を何度も持ってくるのは、その本が好きだってことももちろんあるけど、読んでくれるのがお父さんお母さんだからっていうのも絶対にあるんですよ。
子どもを見ていると、抱いてあげなければならないときが必ずあるから、そのときに思う存分抱いてあげてください。抱くとき抱かないで、子どもが離れようとするときに変に引きとめようとするから子どもが出て行かなくなるってこともあると思うんです。
僕なんかは、小さいときに息子を溺愛しちゃったから、今、大きくなって離れた後は、余計な心配はしないんです。
それぞれの生きる道は違って当然だし、鳥も巣立った後は巣に戻ってきません。巣立つときには自然に巣立ちます。だから、楽しんで子育てしてほしいって思いますね。

─── 今、うちの息子を溺愛中なのですが…(笑)。溺愛は何歳くらいまでしてて大丈夫なんでしょうか?

うーん…。さっきの電車や鳥の話じゃないけれど、それは母の本能の中に組み込まれていることだと思うから、今のまま、感じるままで良いと思いますよ(笑)

─── ありがとうございます!それが聞けて、安心しました(笑)

記事には少しだけの登場でしたが、実は鳥の巣の話もたっぷり教えてもらっちゃいました!
本当に興味深い話ばかりで、すっかり夢中になってしまったのですが、そのほんの一部をご紹介します…

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鈴木 まもる(すずきまもる)

  • 1952年、東京都生まれ。東京芸術大学中退。「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(偕成社)で赤い鳥さし絵賞を、『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。主な絵本作品に『ピン・ポン・バス』『がんばれ!パトカー』(偕成社)、『せんろはつづく』『つみきでとんとん』(金の星社)、エッセイに『バサラ山スケッチ通信』(小峰書店)などがある。また鳥の巣研究家として『鳥の巣いろいろ』(偕成社)、『鳥の巣の本』『世界の鳥の巣の本』『ぼくの鳥の巣コレクション』(岩崎書店)、『鳥の巣みつけた』『鳥の巣研究ノート』(あすなろ書房)などの著書があり、全国で鳥の巣展覧会を開催している。

作品紹介

せんろはつづく どこまでつづく
作・絵:鈴木 まもる
出版社:金の星社
せんろはつづく
作:竹下 文子
絵:鈴木 まもる
出版社:金の星社
せんろはつづく まだつづく
作:竹下 文子
絵:鈴木 まもる
出版社:金の星社
みんなあかちゃんだった
作・絵:鈴木 まもる
出版社:小峰書店
鳥の巣いろいろ
作・絵:鈴木 まもる
出版社:偕成社


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