インパクトのある真っ黒な表紙。そこに光る二つの金色の目。よ〜く見ると耳やヒゲ、ツメも見えてきて…、ん?黒ネコ?
そう、この黒ネコこそが、お話の主人公であるチャック。「かめの森幼稚園」の庭のすみにある土管で生まれました。まばゆいほど白いユキヒメかあさんに似て、他のきょうだいは三毛ネコだったり、白に模様が入ったネコなのに、末っ子のチャックだけは頭の先からしっぽの先まで真っ黒。きょうだいには「カラス」と呼ばれたり「よその子」だとからかわれてばかりです。そんなチャックをいつも温かく励ましてくれるユキヒメかあさん。しかしある日かあさんはやせて体の毛がぬけおちたまま帰らなくなり、他のきょうだいは引き取られ、チャックはひとりぼっちに。かつてユキヒメかあさんから聞いた、尊敬されりっぱなカラスネコだったというひいひいじいさんのクロベエをたずねるため、五月山へ向かいます。しかし途中で会う動物たちから、五月山にはしっぽの先が二つに分かれているバケネコのネコマタブラック・ブラックという悪者がいて、しかもそれがクロベエじいさんのことだと耳にするのです。えっ、そんなはずは!?チャックは無事にクロベエじいさんに会えるのでしょうか…。
恐ろしいネコマタと対峙したり、小さな白ネコ、ハクをお世話したり、美しい飼い猫ふわふわさんの用心棒になったりと、どんどんたくましく成長していくチャック。そんなチャックの胸にどんな時も去来するのは、ユキヒメかあさんの「おまえはカラスネコなんだから、ホコリをもって生きていくんだよ。ホコリをもつというのはね、自分を好きになることさ。自分をたいせつにして、いっしょうけんめい生きていくことだよ」という言葉。はじめは何のことかさっぱり分からなかったチャックも、さまざまな出会いを通してその意味するところを感じ取っていきます。そしてついに、クロベエじいさんが守り抜いた「かめの森」に「うまの森」のゴロニャン一家が攻め寄せてきて、お話は一気にクライマックスへ。そして明らかになるクロベエじいさんとネコマタ・ブラックブラックの悲しい秘密とは?怒涛のような展開に目が離せません。
読み始めたら一気に読めてしまうストーリーの面白さと合わせて、すべてのページに入っているオオノヨシヒロさんの挿絵は遊び心たっぷり。つぎつぎ出てくる個性的な登場ネコや登場人物の表情や名前にもしっかりご注目を。中でも一度見たら忘れられなくなるほど気になってしまったのが、ネコマタ・ブラックブラックの迫力やネコ悪魔ゴロゴロの気味悪さ。もうその怪しさったらありません。他にもたくさんのネコたちが勢いのあるタッチで描かれ、今にもページからネコたちが飛び出してきそうです。自由で楽しそう?でもなかなかキビしいのらネコの世界。ちょっとだけ…いや、どっぷりと、のぞいてみませんか?
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
頭の先からしっぽの先まで真っ黒なカラスネコのチャック。やさしいユキヒメかあさんやきょうだいとの別れ、ネコマタのひいひいじいさんブラックブラックとの出会い。さまざまなひととの出会いが子ネコのチャックを成長させていく。
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