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お姉ちゃんになりたいソッチのために、ねずみのチとキが弟になってくれることに! ところが、二人はいたずらばかりで・・・。
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兄弟のいないおばけのソッチは、同級生たちが弟と一緒に過ごす様子を見て、自分も弟が欲しいと泣き叫ぶ。アッチに弟になって欲しいと頼むがうまくいかず、ネズミのチとキが弟役になってソッチと一緒に過ごすが…
一人っ子の知人は兄弟が欲しいと言っていた。兄弟がある自分は、兄と妹のワガママや暴力と兄弟間の争いの経験しかないので、一人っ子がいいと思っていた。結局、ないものねだりだと、四十路を過ぎてからわかった。
一人っ子は親の介護から逃げられないが、兄弟がいると押し付け合って逃げられる。相続は一人っ子は全部受けるが、兄弟は奪い合い(あるいは拒否しあい)全面戦争になる。
中の良い兄弟というのもあるにはあるが、個人的には体験したことがないので、どういう良さがあるのかわからない。きっとソッチは、自分の寂しさを慰めてくれる相手が欲しいとか、自分が他の人に「お姉ちゃんは偉いね」と良い評価をうけるのを期待したとか、自分がいい思いをしたいから、ないものねだりをしたのではないかと思う。
小さい子どもは仕方ないことだけど、その後に思ったよりも大変だった、という経験をしているのがこの話の素敵なところだ。
人生は、欲しいものが手に入ると、別の悩みが生まれるもの。
人と一緒に暮らすというのは、いい事もあるけど、絶え間なくいろんな問題に悩まされる事でもあるのよ。
…と、意地悪な私は思ってしまう。
ソッチが願いが叶わないから、大声で泣き叫ぶ場面は圧巻。
泣けばどうにかしてくれるだろうという策略で泣く子どももあるけど、このこの場合は単に素直に感情を表現しているように見える。そこまで計算高くなくても、周囲の人からはそのように見られることも、現実の世界では多々ある。自分が子どもの時も、そういう場面にしょっちゅう出くわした。泣いて要求を押し通す子は、結局嫌われる。物語の始めの場面で、1年生の級友たちが意地悪したくなる時もある、という告白があるが、わかる気がする。
この子は自分の欲求に極めて素直に生きているだけだけど、周囲の人の受けは必ずしも好意的ではない。でも、それが人生。
この話は子ども向けだけど、人生の哀しさや滑稽さ、皮肉などがあちこちに見事にちりばめられていると思う。ユーモアもあるけど、なんだか切ない。最終的にはお互い様、ということで落ち着くのに、作者の慈悲心が見られて安心したが。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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