サバンナで動物を追い、その姿を収めた写真で数々の国際的な賞を受賞してきた著者による、大迫力の写真絵本! ゾウのこどもを追った前作に続き、今度の作品のテーマは「ライオン」です。 出産をするために群れを離れ、ひとり子どもを産んだ一頭の母ライオン。 彼女とその子どもたちを追い、サバンナにおけるライオンの姿を生き生きと写し出した一作。
お母さんの体からひょっこり目だけを出して、並んであたりをうかがう子ライオンの兄弟や、座って休むお母さんの首元に頭をうずめる仕草など、子ライオンを収めた写真は、彼らがやがて百獣の王としてサバンナに君臨するのが信じられないほどに、愛くるしいものばかり。 お母さんの言いつけを守らなかったのでしょうか?首をかまれて運ばれていく子ライオンの、そのいたずらをとがめられたような表情もあまりにも愛らしく、思わずほほ笑んでしまいます。
しかし、この作品のみどころは、彼らの愛くるしさだけではありません。 この作品で特別印象的なのは、群れを率いる『王』、おとなのオスライオンの姿です。 なわばりに侵入してきたよそもののライオンを追い立てる場面で、なわばりを見回るオスライオンのその怒りに満ちた表情たるや、まさしく百獣の王にふさわしい貫禄。 特に、オスライオンを正面から映した一枚が、圧巻です。 その鋭い眼光やうすく開いた口にのぞく牙、匂い立つような殺気には、鳥肌が立ってしまうほど!
そしてもちろん、自然なままのライオンの姿を楽しむだけではなく、彼らの興味深い生態についても知ることもできます。 乾季に入り獲物が減ると、母ライオンは自分たちが生き残るために必死で、子どもたちに食べ物を分け与えることはしません。 めんどうを見てもらえないどころか、おきざりにされることもあるといいます。 そんな厳しい環境の中、1歳まで育つライオンはおおよそ半分だけで、その上オスの子どもはおとなの体になると、群れのおとなたちから敵だと思われて追い出されてしまうのです。
実際に現地でライオンを追う著者が写し出す、広大なサバンナの厳しくも美しい光景。 百獣の王の生き様を、強烈な感動を伴って知ることができる一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
ライオンのこどもたちは、群れの中で遊びながら狩りを学び、乾季の飢えを乗り越えて、たくましく生きています。野生のライオンの赤んぼうの誕生から成長までを丁寧に取材した写真絵本。著者は、アフリカの動物保護区で長年撮影を続け、ワイルドライフ・フォトグラファー賞をはじめとする数々の賞を受賞。サバンナのきびしい自然を生きる野生動物の姿を迫力あふれる写真で伝えます。
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