想像してみてください。 人のいない学校を。 そこで迎える夜を。 そして、そこに隠された謎を——
小学五年生の加奈は、とつぜん、人の気配が消えたのに気づいた。 教室にも、職員室にも、運動場にも、人がいない。 自分をふくめた五人の子どもたちだけを残し、学校からは人が消えていた。
学校の敷地を囲む白い霧と壁。 自分たちのぶんだけ、いつのまにか用意される給食。 空っぽだった教室に、一瞬のうちに現れる遊具。
数々の謎をはらむ奇妙な学校で、残された五人はこの「神隠し」の真相を解きあかし、元の世界にもどろうと奮闘する。
一方、五人がいなくなってしまった元の世界の学校は大騒動に。 警察が捜索をはじめ、マスコミは騒ぎ立て、それでも子どもたちの行方は知れず、事件の影響は大きくなっていく。 しかし、保健室の先生である小島早苗だけは、子どもたちのゆくえに心当たりがあった――
第55回野間児童文芸賞受賞作。 学校の怪談や冒険モノのような物語かと本をひらけば、予想外の読み心地にびっくり! この作品は、家族と友情のありかたについて真剣に考えさせられる、人間ドラマが主題なのです。
骨ばって見えるほどやせほそった体をした六年生の男の子。 暑くても決して長袖の服をぬごうとしない一年生の女の子。 密室でパニックにおちいり、我を忘れて泣き崩れる四年生の男の子。
あつかっているテーマの重い物語ではあります。 しかし、子どもたちのそれぞれにかかえる秘密がすこしずつあきらかになっていくにつれ、それでもなお元の世界にもどろうと手を取り合う彼らのけなげな姿に、強く胸を打たれます。
無人の学校でのサバイバルや、すこしずつ明かされる異世界の謎など、読むのがやめられないほどワクワクさせてくれる本作。 そのうえで、子どもたちをとりまく現代的な諸問題にふれ、「知らなければ想像もできない世界」があるということに気づかせてくれる―― 物語の力を借りて読者の視野を広げるという、文学の持つパワーにあふれた、おすすめの一冊です!
(堀井拓馬 小説家)
授業時間中に子どもたち5人が姿を消した。懸命な捜索活動にも関わらず手がかりがない。マスコミは神隠しと騒ぎ立てた。養護教諭の早苗先生には心当たりがあった。小学生の時この学校で不思議な体験をした。クラスメイトにいじめられた時、自分以外誰もいない、もうひとつの学校に行ったのだ。同じことが今この子たちに起きている…ある日保健室のブログに書き込みがある。行方不明になった5人からだった。『ぼくたち、もうひとつの学校にいるよ。早苗先生はどうやって帰ってきたの?』 いじめ、家庭不和、虐待、ネグレクト…子どもたちには守られるべき理由があった。避難させるべき子どもたち。守ろうとしたのは、はたして誰なのか?
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