イギリスの作家ルイス・キャロルが生み出した『ふしぎの国のアリス』は、誰もが知っているお話の一つ。その絵本作品は日本でも数多く紹介されてきました。
そんな中、今回発売された『ふしぎの国のアリス』の世界は、かわいらしさの中にどこか懐かしさを感じます。
それもそのはず。この絵を描いているのは、昭和を代表する少女漫画・叙情画家の松本かつぢ。なんと1960年に描かれた作品なのだそう。50年以上経った今、かつぢ資料館とニジノ絵本屋のスタッフを中心に「松本かつぢ×ニジノ絵本屋 7つの絵本プロジェクト」の第一弾として再編集され、原画の忠実さにこだわって完成しました。
特徴的なのが、アリスの表情や仕草。どのページを開いても、アリスは指先までばっちりポージングがきまっているんです。なんとも愛嬌のあるアリスを見ていると、まるで往年のアイドルを見ているような気持ちになったりして。
装丁のこだわりにも注目です。背表紙は贅沢なピンクの布張りになっており、松本かつぢならではの淡く優しい色合いにぴったり。箔押しされたタイトルからは、制作者達の松本かつぢへの敬意や読者への想いを感じます。
もう一つポイントのが、バイリンガル絵本になっていること。国境を越えて多くの人へ届けられるよう、日本語と英語が表記されています。
「松本かつぢ×ニジノ絵本屋 7つの絵本プロジェクト」は第七弾まで続きます。第二弾、第三弾と、どんな作品が登場するのでしょう。見逃すのがもったいない、注目のプロジェクトになりそうです。
(瀬戸口 あゆみ 絵本ナビ)
皆さんは「松本かつぢ」さんをご存知ですか? 昭和を代表する少女漫画・叙情画の作家であるかつぢさんは、没後30年が経つ現在も多くのファンに愛されています。 ニジノ絵本屋では、数ある松本かつぢさんの作品の中から7つを選び、原画にもとづいて絵本を発刊するプロジェクトを起ち上げました。 第1弾は「ふしぎの国のアリス」。50年以上前に描かれた絵本原画に忠実に、現代版として再出版します。 ふんわりとした優しい色合いのアリスの世界を、あなたも堪能してみませんか? バイリンガル絵本になっているので、お子様の英語の教材としてもオススメです。
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<序文より>
あるはれた にちようび アリスはおねえさんと みずうみに いきました。 おねえさんは きのしたで ながいじかん むずかしいほんを よんでいます。 アリスは たいくつになって「あーあ、なにか おもしろいことはないかしら」と あくびをしながら かんがえていました。
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<松本かつぢプロフィール>
明治37年(1904)〜昭和64年(1986)挿絵画家、漫画家、童画家、グッズクリエイター 神戸市生まれ。東京で育つ。 立教中学中退。 川端画学校でデッサンを学ぶ。 中学在学中、家計を助けるために雑誌のカット描きのアルバイトを始める。 少女雑誌文化が花開き、抒情画家たちが絢爛豪華に筆を競い合った昭和のはじめ、少女雑誌で挿絵画家としてデビューを果たす。 エキゾティックで繊細な美少女画で頭角を現し、やがて抒情的な中にもはつらつとした明るさを持つ新しいタイプの少女画を確立し、高畠華宵、蕗谷虹児らに続く次世代の画家として中原淳一と人気を二分しました。 加えてユーモアタッチの挿絵やコミカルな漫画にも挑戦、対照的な画風を自由自在に操り、既存の画家にはないマルチな画才を示して新境地を開拓します。 昭和13年(1938)には少女漫画の先駆け的作品である「くるくるクルミちゃん」を連載開始。同作品は発表雑誌を変えながら足掛け35年もの長期連載となっただけでなく、愛すべきキャラクターとして定着。次々とグッズ化され、日本の少女向けキャラクターグッズの元祖となりました。 また、戦前からディズニーアニメに関心を寄せて作品に取り入れたり、昭和30年代(1955〜)からは童画の仕事やベビーグッズの企画・制作も手がけるなど、多方面で活躍。コンビから発売されたベビー食器は大ヒット商品となりました。
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