インド北東部の国境地帯に住む少数民族の世界を初めてヴィヴィッドに、かつ学術的に伝える。
これまで、インドの北東部、チベットやブータンとの国境地帯に住む「モンパ」の人々について言及された研究書はごく僅か。日本でもほとんど紹介されていない民族である。 モンパは、主にインドのアルナーチャル・プラデーシュ州のタワン県と西カメン県に住む約6万人の人々で、国境を挟んで、チベットやブータン側にも類似の言語を持つ人々が住んでいる。複数の言語を持つがそれを表記する文字を持たず、20世紀中葉まで民族としての集団形成も進んでいなかったが、独立後のインドに組み込まれ、「指定トライブ」として指定されてから半世紀の間に、少しずつ民族的アイデンティティの形成が進んできた。 筆者は、約15年にわたって精力的な現地調査を続けながら、モンパの人々の集団形成の様相や文化の変化を見つめてきた。その成果を衣装・伝統文化・言語・自治要求・観光など多様な視点から提示し、その動態的な過程を考察する。 カラー口絵16頁を含む図版多数。充実の参考文献。
【主な内容】 国境地帯の歴史とトライブ(部族)/一枚布から貫頭衣という共通衣服への民族衣装の変化/チベット仏教文化の定着としての祭/国境をまたぐ民俗儀礼の変貌/伝統工芸・紙漉きの行方/ボーティ語教育とモン自治要求運動/「シャングリ・ラ」イメージによるツーリズム開発 など
|