河合塾で世界史を教えている著者のもとには、定期的に、下記のような質問をしてくる学生が現れる。 「先生、いったいどうしたら、先生のようにそんなにも膨大な世界史知識を『暗記』できるでしょうか?」 その考え方は、実は、根本的にまちがっている。「暗記」なんかしていたら、とても覚えられる量ではない。暗記をしようとしないからこそ、簡単に覚えることができるのだ。 正しい世界史学習法とは、細かな歴史事象や固有名詞を覚える前に、歴史の流れを理解することが第一義である。世界史の全体構造さえ把握すれば、細かな歴史の事実など、簡単に覚えることができるのだ。そして歴史の「流れ」を知るためには、各国の歴史をばらばらに勉強するのではなく、歴史の流れの中に存在する「段階」を見抜き、その「段階」ごとの特性を見つめなければならない。近代以前の歴史は、主に「気候」という共通の要因により、各段階ごとに一定の特徴を示しているのである。 たとえば、本書では「古代第8段階」に当たる紀元元年から西暦200年にあたる時代は温暖期に当たるため、当時の2大超大国であるローマと漢はともに国内矛盾を拡大させながらも安定期に入り、混乱していた地域(中央アジア・インド)には新たに統一王朝(クシャーナ王朝、サータヴァーハナ王朝)が生まれた。しかし、その次の「古代第9段階」では寒冷期が訪れたため、二大国はそろって亡びに向かい、クシャーナ王朝、サータヴァーハナ朝も衰亡していくのだ。 このように歴史の構造を習得する神野式世界史学習法を習得した学生は、暗記に苦労することなく、一年間で偏差値を20〜30上げることができるという。 本書は、著者が見抜いた「歴史の全体構造」を、21枚の地図も用いてわかりやく解説。本物の教養を身につけるために必読の一冊である。
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