あいうえお順で並んだ教室の座席。 「しらゆきちりか」の後ろに座ったのは「すずきたいすけ」。声も体も大きくて、なんだかライオンみたい。そう思ったら、本当にライオンに見えてきました。
ライオンはちりかのことを「ちび」と呼んだり、後ろからおさげを引っ張ってきたり、替え歌でからかってみんなで笑ったりします。前の席の「さとうさん」は、「すずきくん、ちりちゃんがすきなんだよ」と言いますが、そんなことはありません。だって大好きな給食のプリンまで食べてしまうのですから。
ライオンの存在がこわくて、学校に行くのが嫌になってしまったちりか。けれどもさかあがりの練習がきっかけでふたりの関係に変化が訪れます。さかあがりに苦戦するライオンを見て、あることに気がついたちりか。ちりかのひと言がきっかけで、たちまちさかあがりができたライオン。それまでいくら頑張ってもできなかったのに、ちょっとしたことで突然できてしまったことに驚いたふたりはもうおかしくて、大笑い。何度も読み返したくなるとびきり素敵な場面です。しかしこの後、またもや複雑な気持ちになる出来事が訪れて‥‥‥。
こわそうなクラスメートにびくびくして学校に行きたくない気持ち、からかわれて嫌な気持ち、意外な面を発見しておどろく気持ち、はじめてさかあがりができた時の誇らしい気持ち。ちりかが感じるさまざまな気持ちは、読む子どもたちにもどこか身に覚えのあるものではないでしょうか。こういう気持ちどこかで知ってる‥‥‥なんて思いながら、楽しく読めてしまうでしょう。
作者は、絵本『あのときすきになったよ』の薫くみこさん。ちりかとライオンの関係が少しずつ変わっていく様子が実に丁寧に描かれていきます。困ってばかりだけれど、想像力が豊かだったり、口数は少ないながらもちゃんと言いたいことを伝えるちりかちゃんも可愛らしく魅力たっぷりに描かれます。さらにこのお話を楽しくしてくれるのが、大島妙子さんの挿絵です。特筆すべきは、子どもたちの表情の豊かさ。 困っているちりかの表情と、ちりかをからかうライオンのなんとも嬉しそうな表情の対比、またお友達の山本さんの目をくりくりさせた好奇心いっぱいの表情など、絵からもどんどん子どもたちの気持ちが溢れてくるようです。
クラスメートのいろいろな面や気持ちに目を向ける視点が養われる、等身大の子どもたちに寄り添った幼年童話。小学1、2年生の子どもたちにとくにおすすめです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
「やだなあ」……なんでわたしが、学校に行くのが嫌かというと、後ろの席に「すずきたいすけ」というライオンがいるからです。 大きくてこわくて……ライオンみたいだなと思っていたら、だんだんライオンに見えてきました。ライオンは、わたしのおさげを引っ張ったり、替え歌をうたったりして、からかってくるのです。
さかあがりができないライオンは、放課後、さかあがりの練習をしていました。わたしもできなかったので練習をしていましたが、何度か練習するとできるようになりました。 そこで、わたしがライオンにアドバイスをしてあげると……ライオンもできるようになったのです。ライオンは自分でも驚いていて、わたしたちは目が合ったとたん、声を合わせて大笑いをしました。
それから夏休みが明けた日、先生からライオンが引っ越したと聞いて……。
好きの裏返しで、ちょっかいを出してしまう男の子。 それが本気で嫌だと思ってしまう女の子。 ふとした出来事から仲良しになっていく姿は、等身大の低学年そのもの。 ふたりのやりとりが愛おしく心温まる幼年童話。
小学校1年生のちりかは学校に行きたくありません。なぜなら、後ろの席にライオンみたいな鈴木くんが座っているから。ちりかは、ちょっかいばかり出してくる鈴木くんのことが、いやでたまりませんでしたが…。一緒にカエルの引っ越しを眺めたり、鉄棒の練習をしたりしているうちにだんだんとちりかの心が開かれていくのですが…。ちょっぴり切なくもあるストーリー。こうして自分とは違う他者の存在を認め、人として成長していくのですよね。 (ぼんぬさん 40代・ママ 女の子6歳、女の子2歳)
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