<プロフィール> 神奈川県生まれ。『水妖の森』で、ジュニア冒険小説大賞を受賞し2006年にデビュー。主に児童書で活躍しているが、一般小説も手掛けいる。作品に、「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」「十年屋」「妖怪の子預かります」シリーズなどがある。
<内容>
薄気味悪い住人が集い、怪しい大家が取り仕切る、この世の果てのような長屋―−通称「化け物長屋」に住む女・お百は生まれつき左目が青い。 その目は青いだけでなく、不思議なものを見つける力、人には見えないものが見える力を宿している。それゆえに実の親からも疎まれ、様々な苦労をしてきた。 行き遅れたまま三十路近くになった今では、すっかりひねくれ、やさぐれ、かつ開き直っており、不思議な目を使って「失せ物屋」を営んでいる。
ある晩、死にかけていた子狸・焦茶丸を助けたところ、お百を見るや、「主様の鱗を返せ!」と言う。 三十年ほど前、山神の鱗百枚がばらまかれた。山神の浮気を怒った女神のしわざで、鱗はあちこちに飛び散ったという。山神は家来達に鱗を集めるように命じるが、まだずいぶん欠けたままだという。そして、子狸の言うことには、その鱗の一枚が、お百の左目に宿っているというのだ。
自分が苦しんできたことの発端が、神様の痴話喧嘩だと知り、お百は激怒。「この目で千両稼ぐまでは、絶対に返さない!」と宣言する。目を離すわけにもいかないと、焦茶丸も一緒に暮らすことに。 以後、一人と一匹は、江戸に満ちる様々な因果や失せ物を見つけることとなる――
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