戦争から七年。灰燼まだくすぶる東京下町で、 白鬚橋のボルトの穴をラブレターの隠し場所にした 純なふたりの物語。
映画、TVドラマにもなった著者二十歳の記念碑的純愛小説。
「あの橋の上で……」と、私は考えた。 失業中の青年は、ある日、健康そのものの娘と出会い、ふとしたきっかけから、ささいな会話が交わされたとしよう。 二人はたがいに好感を確認するのに、時間はかからなかった。彼女は彼の鉄工場とは隅田川をへだてた対岸の、石けん工場に働く娘で、そして、それから……と私の想像力は、一組の貧しい恋人たちの明日へとつながってゆく。 (「あとがき」より)
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