社会経済的基盤を失って故郷を離れ、新しい地で居場所を作り上げなければならないチベット難民は、意外にも単なる脆弱な存在ではない。彼らはどのように生計を維持し、どのように人間関係を結んでいるのか、1年以上にわたるフィールドワークから難民たちの生き抜く姿を明らかにする。
常に変化しているという不確実性の中に生きる彼らは、むしろ物事をうまく操ることで未来を好転させられるという感覚から偶然に身を委ねる「賭け」の生き方にたどり着くほか、家族以外と築く仲間関係に影響を受けて第三国への再定住を決意する。モノやカネとともに環流する彼らの姿は、「難民とはなにか」を問い返してくる。
|