世界が驚いた、江戸時代の日本の教育。
近江商人発祥の地の一つ、滋賀県五個荘地区では、かつて寺子屋教育が盛んに行われた。そこでは「個」を大切にした授業、読書・習字・算術を基本としながら、人としてのあるべき姿、「三方よし」に通ずる豊かな精神が育まれた。また、女子教育の実践など先進的な取り組みがなされていた。 五個荘川並の寺子屋師匠、川島俊蔵に焦点をあて、多数の史料をもとに、当時の寺子屋教育の実相に迫る初めての書。
「巷間、近江商人と言われる人たちが、近世徳川期から明治大正、さらに現代に至るまで、わが国の経済発展のため、いかに大きな役割を果たしたかは、よく知られている事実である。しかし、その凄まじき商魂の育まれた背景に、あの徳川期の「寺子屋の教育」が深く秘められていたことを知る人は殆どいなかったと言ってよいであろう。」(「推薦の辞」より。花園大学名誉教授・文学博士/西村惠信)
著者は言う。「現代社会の目まぐるしい変化に目を奪われ、よりよい人間の生き方や教育の在り方についての方向を見失いつつあるという現状に、強い懸念を抱いているのは私ばかりではないであろうと思う。このような激動の時代にこそ、封建時代から、西欧文化の激流が押し寄せた日本の近代への変化の時代に、優れた人材を世に送り出した日本の寺子屋での教育の成功にじっくりと学びながら考えてみることも大切ではないかと考える。読み・書き・そろばんの習得が徹底され、寺子屋が培った基礎学力は、その後の子どもたちに何をもたらしたのか。神儒仏崇敬の教えを基に、人間の生き方の指針を与えた寺子屋の教育は、どのような若者の心を育んできたのか。古いものの価値を忘れてしまう傾向のある現代に、愚直に、「基礎・基本の徹底」と「心を育む教育」という座標軸を用いて、今行われている教育の分析を行い、今後の教育の在り方を考えることが急務であるように感じるのである。」(「あとがき」より)
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