14世紀、ヨーロッパ。 小高い丘の上に建つ石造りの堅牢な城と、そのふもとに広がる城下町。それを遠くからながめる大軍勢。鎧を着込み、馬に乗る騎士たちは槍をかかげ、色とりどりの旗をはためかせています。軍勢に城下町を焼き払われ、領主の守る城へと逃げ込む町民たち。跳ね橋が上がり、水の満ち満ちた堀が敵の侵攻を阻み、城の中と外とでにらみ合う両軍勢。
平穏とはいいがたい情勢ではありますが、さあ、今こそツアーをはじめましょう!
中世ヨーロッパの巨大なお城を、ザクザクと輪切りで大解剖!! 正面の城門塔から始まり、城内を区切る各門をくぐりながら、さらには天守を抜け、裏の通用門まで── 巨大なお城の断面図をのぞきながら、中世のお城にほどこされた数々の工夫と、そこに息づく人々の文化を知ることができます。
舞台となるお城は、なんと戦争のまっ最中。城門では、侵入を試みる敵軍勢との激しい戦いがくり広げられています。読者の『お城ツアー』最初のシーンは城門。城門塔の上では、火矢や投石機といった敵の攻撃に対抗するための突貫工事がバタバタとおこなわれ、門前には、保護を求める民の行列が伸びています。
戦闘がはじまれば、ツアーは城門断面へ。厚い壁の内側では兵士たちが忙しく動き回り、敵に矢を射り、あるいは敵の放った火を消し、必死になって戦っています。お城ツアーが城郭の奥へと進むに従って時間も経過し、やがて戦闘は終わりを迎えます。落ち着きを取り戻した天守の大広間では、豪奢な宴会がひらかれ、そのたもとにある内閣の広場では、人々がレスリングや騎士ごっこに興じる、平和な姿を見ることができます。
ただお城の中を図解するだけにとどまらず、戦争時、平時と状況を変えながら、その時々で人々がどう働き、戦い、あるいは暮らしているのかを知ることができるのがみどころ!
おどくべき緻密さで描き込まれたリアルな線画は、目を凝らして隅から隅までながめているうちに、アッというまに時間が経ってしまいます。チマチマと動き回る人々と、お城の断面は、なんだかアリの巣観察をしているような気分。
イラストだけでなく、解説の情報量もたっぷり! お城の設備やその機能についてはもちろんのこと、お城を中心にした人々の生活や文化についても詳しく解説されているのが特徴です。たとえば、敵を倒すための恐るべき兵器『投石機』。それが平和なときには、イベントにおいてバラの花を観客の頭上へまくために使われていたといいます。パンを焼くときにはお城まで出向いてその設備を使わなくてはならず、家で焼くと罰せられてしまう、だなんて驚きの事実も! 戦争のシーンや、罪人に対する刑罰について解説したページもあり、一部に血なまぐさい描写も含まれている点にはご留意を。
市場があり、訓練施設があり、牢獄があり、裁判所があり── まるでひとつの街のよう。 中世の王や貴族の暮らした、豪華絢爛な巨大建築を探検!
(堀井拓馬 小説家)
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重機の無い14世紀、人びとはどのようにして巨大な城を築いたのか?城の構造はもちろん、城の攻め方・守り方、城の中での日々の暮らしや、おそろしい拷問まで徹底図解!緻密なイラストですみずみまでわかりやすく紹介します。
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