
世界最高峰のヒマラヤ山系に発する幾多の大河が流れるアジア。 その「水」の恩恵と災厄との格闘がそのままアジアの歴史でもある。 水の確保が人間の生活を支え、文明のかたちを定めてきた。 アジアが現在、世界人口の過半数を擁するのは、自然増加ではなく 綿々と続く水との格闘の成果でもある。 だが、近代以降の水利技術の発達、それによる政治社会システムの変化が 人口膨張、都市化の拡大、急激な経済開発を産み、その果てに水資源の枯渇や 水質の広範な汚染が引き起こされ、それが新たな地域格差と紛争を生み出している。
本書は近現代200年にわたるアジアについて、植民地帝国、資本主義、 独立革命といった従来の歴史視点に「水」という新しい次元を加えることで、 まったく新しい姿を描き出すものである。 気候変動によってさらなる水資源の枯渇と争奪、地政学的な変化が広がりつつある現在、 人間と水を考えるうえできわめて示唆に富んだ書である。
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