1960年代、日本でサーフィン文化がおおきく花開いた時代。 湘南の海に、のちに伝説となる、ひとりのサーファーがいた。 特別な波がきた時にだけ開催される幻の大会、『狸ヶ崎クラシック』の第ゼロ回大会で優勝したというそのサーファーは、当時まだ小学生だったという。
伝説の舞台となる1960年代の湘南で、小学6年生の亮は、サーフィンとは縁遠い生活を送っていた。 そんな彼が出会ったひとりの少年、誠。 水と一体であるかのように自然な動きで波にのる誠に教えられて、誠はサーフィンにのめり込んでいく──
湘南サーフシーンに語り継がれることになる少年たちの、伝説と青春の物語! 舞台となる1960年代は、サーフィンが日本で最初にブームになった時期です。 今のようにサーフィンの道具を扱うお店がたくさんあるわけではなく、主人公の亮と誠が置かれた環境は、おせじにもサーフィンのために恵まれているとはいえません。
船の構造を参考に、限られた材料から作りあげた、木のボード。 年上のサーファーたちの姿を見て学び、失敗と工夫を重ねて、松ヤニからつくったワックス。
ときに、ふたりの小学生サーファーを快く思わない相手から、怖い目に合わされることさえ……。 それでも、波への情熱を武器に、ふたりは海に出ます。 だって、サーフィンが楽しいから!
初めて波に乗った亮の、思わず声がもれるほどのワクワク、ドキドキ!
「亮はなぜか大声で笑っていた。なんだか、めちゃくちゃ気持ちがいい。爽快感が体のあちこちで、ぴちぴちと音を立ててはじけるような気分だった」
月夜の海で体験する、『ムーンライト・サーフィン』の世界!
「海には、亮と誠以外にだれもいない。ビーチと並行して走る道路には、ひっきりなしに自動車が走っていた。しかし沖に出てしまえば、そこは波音だけの世界だった。静かでおおらかな、夜の海の世界だ」
そして、サーファーが『チューブ』と呼ぶ波の中のトンネルに、はじめて入ったときの神秘的な光景。
「中から見るチューブは、まるでガラスの世界のようだった。右も左も上も下も、すべてが半透明な物質でできている。わずかに見えるすきまというものは、前方にあるチューブの口だけだ」
潮の香りや、夏のぬるい水温さえ肌に感じられそうな、みずみずしい描写がみどころ!
夏! 海! そして青春! 夏の解放感がいっぱいにつまった、さわやかな一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
1960年代の湘南、小学6年生の亮は兄の太一と映画『ブルーハワイ』を観た帰り道、浜辺から最近現れ始めたサーフィンをする人たちを眺めていた。 その中でもとびきり波乗りが上手な少年が亮のもとにやってきて「おまえ、サーフィンに興味あるのか」と声をかける。少年は安藤誠といい亮と同い年の12歳だった。
それから、ふたりは誠の手作りの木製の板で、毎日サーフィンの練習をするようになった。
そんなある日、乱暴なアメリカ人の若者スティーブが数か月後に狸ヶ崎で開催されるサーフィン大会で上位を占領して、狸ヶ崎のビーチを占領しようと企んでいることをふたりは偶然知ってしまう。
亮と誠はその大会に参加することを決意するが、大会まで一カ月を切ったある日、ふたりの板は何者かに燃やされてしまって……。
亮と誠の友情に胸が熱くなる青春ストーリー。
こちらの本の時代設定は1960年代の湘南。
親の私も生まれていない知らない世代なので、大人が読んでも面白く思いました。
何か熱くなれることを見つけ懸命に取り組む、まさに青春ですね。
素敵だなぁ!と惚れ惚れしてしまいます。
夏の1冊にもおすすめです。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子11歳)
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