魔法使いの女には三人の息子がいた。魔法使いは息子たちが自分の魔法の力を盗もうとしていると思い込んで長男を大鷲に、次男を鯨にしてしまった。それを見てすたこら逃げ出した三男は、ある村で、かわいそうなお姫様のうわさを聞いた。魔法使いに魔法をかけられて「きんきらきんのお日さまの城」に閉じ込められているとのだという。三男はお姫様を助けようと、魔法を解くために必要な「すいしょうだま」を探しにでかける。
昔、魔術師が自分の息子3人に対し「自分の魔力を奪おうとしている」と思い込み、それぞれを魔物に変えた。末の息子は辛くも逃げ延びた。旅の途中で魔法にかけられたかわいそうなお姫様が助けを待っていると知り、命を懸けて救出しに城に向かうが…
魔法が出てくる話に、現代の絵描きの魔術師が更に不思議な雰囲気を加えた濃厚仕立て。延々と森が続くだけの場面ですら妖気が漂い、ちょっとしたホラーだ。迫力満点、不気味さ満点で、本を閉じた後も余韻で悪い夢でも見そうな勢い。魔法使いが出てきて、怖くてスリルがあって、最後はハッピーエンドという面白くないはずがないストーリー。一番最後はおそらくスズキコージ氏の創作がおまけで付いていると思うが、これがシュールで妙に現実的で、しっかりこの世に戻ってきた感じがあって素晴らしい。
魔法の世界を存分に体験した後、現実の世界に連れ戻してくれる配慮がなければ、行ったきりになりそうだもの。世界観が変わるくらい、絵に吸引力がある。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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