医学や科学が現代よりも発達していなかったころ、人々は未知の感染症をどのようにとらえたか。感染症はいかにして広がり、そしてその困難の中、人はどのように希望を見出していったのか。『万葉集』に残る天然痘の挽歌、『源氏物語』に描かれるマラリア、『方丈記』養和の飢饉、『徒然草』などが描く流言蜚語、江戸時代の三密回避「疱瘡遠慮」、夏目漱石と腸チフスほか。約1300年間の記録をたどり感染症の地平を見わたす書き下ろし論集。
感染症で繋げる日本文学の歴史 ロバート キャンベル
『万葉集』と天平の天然痘大流行 品田悦一
平安時代物語・日記文学と感染症 虚構による「神業」の昇華 岡田貴憲
『方丈記』「養和の飢饉」に見る疫病と祈り 木下華子
神々の胸ぐらを掴んで 感染症と荒ぶる禅僧のイメージ ディディエ・ダヴァン
流言蜚語と古典文学 鬼・髪切虫・大地震 川平敏文
中世の文芸と感染症 海野圭介
江戸時代の漢詩文と感染症 山本嘉孝
養生の基底にある思想 『延寿撮要』から『養生訓』へ 入口敦志
伝奇小説の中の疫鬼たち 木越俊介
〈病〉と向き合う村びとたちの知恵 ある山村の日記から 太田尚宏
安政のコレラ流行と歌舞伎 日置貴之
幕末役者見立絵と感染症 高橋則子
コレラと幕末戯作 山本和明
近代小説と感染症 柳浪・漱石・鴎外から 野網摩利子
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