第一次世界大戦時の北イタリア。父と兄たちが戦場へいったあと、13歳のイオランダと妹は、母親とも離ればなれになってしまう。戦争が激しくなるなか、家族の秘密を知った姉妹は、祖母を探す危険な旅を決意する……。もつれた家族の糸をほぐし、生きる力をつかみとっていく少女の感動の物語。ストレーガ賞児童書部門受賞作。
■三辺律子さん推薦コメント 写真は雄弁に語る――というけれど、ぼやけた背景にまで注目する人は少ない。しかし、この物語は、写真の片隅に写った人、レンズから目を背けている人、元が何かもわからない瓦礫や、灰が舞うだけの空など、これまで背景にすぎなかったものにピントを合わせる。 レンズの役割をするのは、北イタリアの片隅で暮らす13歳の少女イオレ。第一次世界大戦が始まった1914年から18年まで、イオレの目はさまざまなものをとらえつづける。「手柄を刻む」ために戦争へいく兄、村人に嫌がらせをする兵隊、毅然とはねつけたためにスパイ容疑をかけられる母親、味方の不注意で燃えあがるウーディネの町、必死でイオレと妹を守ってくれる盲目のアデーレおばさん、大きなお腹を抱えて逃げる女性、大人たちが言う「ケダモノ」には見えなかった敵兵…… ピントを合わせるところを変えるだけで、公の場で語られてきたものとは別の歴史が浮かびあがる。女性や子どもにもっとカメラを手渡せと、この物語は叫んでいる。
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