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りりかさんは、ぬいぐるみのお医者さんです。 りりかさんは小さな頃に、ぬいぐるみのからだが思っていたほど丈夫ではなく、かわいがればかわいがるほど、やぶけたり、ほつれたり、汚れてしまうことに気づいてしまったことから、ぬいぐるみの診療所を開きました。
ぬいぐるみ診療所は、美しい高原の森の中。いちばん近い町からもだいぶ離れた山の中にあるにも関わらず、りりかさんのもとへやってくる患者さんはあとをたちません。
今回も3組の患者さんがやってきたようです。最初の方は雑誌編集者の美和子さん。美和子さんは雑誌のぬいぐるみ特集の取材のためにりりかさんに話を聞きにきたのですが、ぬいぐるみをせっけんで洗ってはいけないという話が出たあたりから、美和子さんに笑顔が消え、様子が変わってきます。それは美和子さん自身が小さいころかわいがっていたねこのぬいぐるみと関係があるようなのですが‥‥‥。タイトルにもなっている「わたしのねこちゃん」と美和子さんの間にはいったい何があったのでしょうか。
その他、落ち着いた雰囲気の男性が、シュタイフ社製のアンティークテディベアの泣き声が真夜中に聞こえると相談にやってくる「かなしみのエドワード」、はりねずみのこどもが、白いがちょうのぬいぐるみが捨てられていると伝えにくる「モーツァルトの願い」を含め、全部で3編のお話が収録されています。
物語の魅力はいくつもあります。まず惹きこまれるのは、りりかさんがぬいぐるみを丁寧に治療していく技術。わたをぬいて入れ替えたり、ほつれや穴がないかを細かく検査したり、きれいに洗ってあげたり‥‥‥それはそれは丁寧に心を込めて治していくのです。さらには持ち主の心にある引っ掛かりや痛みにも目を向けていくのですが、持ち主の身に起こる夢とも思えるような不思議な出来事はりりかさんの魔法なのでしょうか。各お話の最後には、魔法の鍵となった植物の花言葉が種明かしのように登場し、お話全体を包み込んでくれます。
お話を描かれたのは、「はりねずみのルーチカ」シリーズのかんのゆうこさんと北見葉胡さん。お話と挿絵の世界観がぴったり合って、美しくて温かな挿絵とともに、ぬいぐるみと持ち主それぞれの優しさと温かさ、切なさ、悲しみなどの様々な感情と、不思議で幻想的な魔法の世界が立ち現れます。「りりかさんのぬいぐるみ診療所」2巻目となる本書には、患者さんにはりねずみの「ルーチカ」が登場する嬉しいサプライズも!
見開きページには、ぬいぐるみ診療所の外観や間取り図、「いこいの部屋」(治療を終えたぬいぐるみたちや、里親さんを待っているぬいぐるみたちが過ごす部屋)やぬいぐるみたちのベッドルーム(治療中のぬいぐるみたちが静かに眠る部屋)の様子がよく分かる挿絵があり、さらに本のカバーを外すと、巻ごとに違う色の表紙が現れるのもお楽しみです。すみずみまで丁寧に作られた美しい本の装丁をぜひ味わってみて下さいね。
「ぼくたちぬいぐるみは、こどもたちの家族や友達になれるという、本当に幸せな役目を担うために生まれてくるんだ」 ぬいぐるみが好きな子どもたちから、ぬいぐるみが好きだった(ずーっと好きな)大人の方に。大切なぬいぐるみへの思いとともに宝物のような本となることでしょう。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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◎『りりかさんのぬいぐるみ診療所』シリーズ最新作! 大人気「はりねずみのルーチカ」シリーズのかんのゆうこと北見葉胡コンビの、 心のいたみをいやす物語。
◎りりかさんは、ぬいぐるみのおいしゃさん。 ぬいぐるみだけでなく、ぬいぐるみの持ちぬしの心までいやします。
今日は、小さいころ、かわいがっていたぬいぐるみと 悲しい別れ方をした美和子さんがやってきました。
りりかさんは、自家製のロシアンティーをいれて、呪文をとなえます。 その後、美和子さんは、ふしぎな世界にみちびかれ、 かわいがっていたぬいぐるみとのあたたかいつながりを、とりもどすのです。
「たとえ、ぬいぐるみたちと別れたとしても、かられはちゃんと思い出の中で生きていて、 いつまでもずっと、持ち主だったみなさんのことを愛し続けてくれると、 わたしは信じているんです。」(本文より)
◎”心のいたみをいやす”「わたしのねこちゃん」、 ”自分を信じる心をとりもどす”「かなしみのエドワード」、 ”大切な人に気持ちを届ける”「モーツァルトの願い」の3話が読めます。
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