おかあさんが買い物の後、ほっと一息カフェでお茶をする時間、男の子は付き合って、待ってあげています。「ねえ。おかあさん。まーだ?」「ごめんね。もうちょっとだけいい?」おかあさんがいもうととゆっくりしている間、男の子は突然、ひとり違う世界に入り込みます。
「ねえ!おかああさん。ペンギンがいるよ」「あら。よかったじゃない。ペンギンだいすきでしょ」 「ねえ!おかあさん。せんすいかんだよ」「すごーい!こんなチャンスにどとないわ。のっちゃえば?」 男の子はファンタジーの世界に入り込んでいるというのに、なぜか会話は変わりません。おかあさんは淡々と返事するのみ。男の子はお母さんに頼ることなく、自分で進んで行動していくのです。いつも一緒のお母さんから一歩自立する、男の子の成長物語ともいえますね。
作者の藤本ともひこさん曰く、この作品は「なんじゃ、こりゃ」を楽しむ絵本。はじめ読んだときは急展開に驚いてしまうかもしれませんが、何回か読んでみると、現実の世界とファンタジーの世界がつながっているのがわかります。出てくるドラゴンも潜水艦も飛行機も、あれ?どこかで見たような……。前のページと見比べながら、色々と発見できますよ。また、子どもは男の子のセリフを、大人はおかあさんのセリフを声に出して読んで、掛け合いを楽しむのも良いですね。親子でちょっと不思議な「なんじゃ、こりゃ」の冒険を楽しんでください。
(出合聡美 絵本ナビライター)
主人公の男の子とお母さんの掛け合いで進む絵本。ぜひ母子でセリフを読み合ってみてください。 物語は、ある地点からファンタジーの扉が開き、潜水艦に乗ってペンギンの国へ。そしてドラゴンとのちょっとした闘いになる。 異世界へ旅立つ前の現実世界の場面の絵の中に、その後に出てくるものが見つけられるかなあ。 そういう絵を読む楽しみも、体感してもらえたら嬉しい。 いつもお母さんといっしょだけど、そんな男の子のささやかな自力解決(自立の萌芽)の物語でもあります。
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