「望みはこれに書いておくといいよ。きっとかなうから」 そう言っておばあちゃんが手渡してくれた「えにっき」。前作『願いがかなうふしぎな日記』で、五年生の光平は、夏休みに十個の目標を日記に書いて次々に実現させていきました。「オボレンジャー」というあだ名をつけられるほど泳げなかったのに、五十メートルも泳げるようになり、百四十ページもある『星の王子さま』を最後まで読み、読書感想文を仕上げることができたのです。
そんな夏休みの成果を冬休みにつなげようと、光平は再び日記を始めることに。ところがインフルエンザにかかり、出鼻をくじかれてしまいます。結局始めることができたのは、元旦の一月一日。転校してしまった石原さんからの年賀状を受け取った嬉しさがきっかけとなって、こんな目標を立てます。 「ぼくは一月一日、石原さんに年賀状の返事を書いた」 しかしいざ書こうとすると、何度も文章に悩んだり、新しい年賀状が見つからなくて困ったり、やっと手に入れた年賀状によだれを垂らしてしまったり、はたまた上下逆さまに書いてしまったり、と失敗の連続です。はたして最初の目標を無事達成することはできるのでしょうか。 その後も「スミス先生に英語で質問した」「100メートルを泳いだ」「マラソン大会で去年の記録を30秒更新した」などと、本気で叶えるために「したい」ではなく「した」という言葉で目標を書いていく光平ですが、出だしの年賀状に続いて、ひとつひとつ目標を叶えていく過程は、夏休みの時のようにうまくは進みません。前作の『願いがかなうふしぎな日記』を読まれた人は、あれ? 今回はなんだかスムーズにいかないことばかりだぞ、と思うかもしれませんが、そこで注目したいのが、光平の目標の内容です。本作では、苦手な英語への目標や、水泳やマラソンでも具体的な数字を出して、夏休みよりも高い目標を立てて挑戦しているのです。この目標の立て方から、夏休み以降の光平の大きな成長が感じられます。
はじめは難しいと思っていたことでも、努力を積み重ねてできるようになり、そのできた! という自信が、次のまた難しそうな目標にチャレンジする力になっていく。「もし」という言葉は弱気になるので使わずに、自分を信じて「できる!」と奮い立たせる。あれこれもがきながらも決してあきらめず目標に向かって進んでいく光平の姿は頼もしさを増したようです。今回、目標が達成できないことも出てくるのですが、ある理由からその時の光平の気持ちはすがすがしく、新たな気づきもあったり、ここにも光平の成長が頼もしく感じられました。
さらに、本作では、光平の小さな頃からの、宇宙飛行士になりたいという夢にも、一冊の本との出会いによって、一歩も二歩も近づいていきます。
もっとこうなりたい、こんなことができるようになりたい、と一生懸命考えている頑張り屋の小学生に。 夢や目標に近づくにはどんな風に考えてどう行動したら良いのか、光平の奮闘する姿がきっと挑戦する勇気やヒントをくれることでしょう。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
夏休み、おばあちゃんからもらった日記に目標を書いてつぎつぎと実現させた光平。冬休みに再び日記を始めることに決めた。ところがクリスマスイブの日、インフルエンザにかかり、日記のスタートが遅れてしまった。 冬休みの最初の目標は、「ぼくは一月一日、石原さんにはげましの年賀状を書いた」。日記に書いたことは自分との約束で、実現させるためには自分で努力するしかない。しかし、年賀状によだれをたらしたり、上下逆さまに書いてしまったり、失敗の連続。それでも、なんとか年賀状を完成させることができた。 その後も日記に、「スミス先生に英語で質問した」「100メートルを泳いだ」「マラソン大会で去年の記録を30秒更新した」などを書いて、光平は夏休みよりも高い目標に挑んでいく。 失敗や挫折を経験して成長していく姿を描いた一冊。 「読書感想文におすすめの本」として好評の『願いがかなうふしぎな日記』の続編。
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