「あーあ、学校に行きたくないなぁ。だってぼく、友だちいないもん。」 小学一年生の男の子、リクには友だちがいません。 それは、友だちにいじわるをしてしまうから。
中でも、性格がゆっくりなコウくんの頭を後ろからカポンとぶったり、キリちゃんが話しかけてきたら、ぷいと席を立ったり。目が合ったらそらしたり。
キリちゃんなんかきらいだ。 コウくんだってきらいだ。 だけど、ほんとうは‥‥‥。
本当のことがうまく言えなくて、胸の中に灰色のもやもやがいっぱいになってしまったリク。 友だちとうまくいかない時、家族に怒られてむしゃくしゃした時、いつもリクはかがみにうつる自分に話しかけます。するとある時、かがみの中から声がして、あっという間にかがみの中に吸い込まれていき‥‥‥。 はたしてかがみの中の世界はどんな風になっているのでしょうか。 そしてリクは、元の世界へ戻ってこれるのでしょうか。
このおはなしの面白いところは、主人公のリクがいじわるなこと。 おはなしの主人公って、いい子や大人しい子の方が多かったりしませんか。 でも、いじわるする方の子だって、いろいろな気持ちを抱えていて、本当はいじわるしたくないのに、どうしてこんな行動をしてしまうのだろうともやもやしたり、むしゃくしゃしたり。素直になれないリクの心の声がたくさん聞こえてくるようです。そんなリクの様子に共感する子もたくさんいるのではないでしょうか。
作者は、『大坂城のシロ』や、『夏に降る雪』など読み応えがあり、心に残る小学校中高学年向けの作品を多く書かれているあんずゆきさん。本作品は小学校低学年向けのおはなしですが、主人公のリクの気づきは、そのまま読む子どもたちの気づきとなって、心に残っていくことでしょう。
リクの気持ちを知り、想像することを通して、なかなか掴みきれない自分の気持ちを考えるきっかけにもなりそうな一冊です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
「あーあ、学校に行きたくないなぁ。だってぼく、友だちいないもん。」いじわるなリクの友だちは、かがみにうつるボクだけ。ある日、とつぜんボクに話しかけられたリクは、かがみの中のふしぎなせかいへすいこまれていって…。
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