冷笑よりも、素朴だが重要なメッセージ。
筆禍に舌禍、テロ事件やコロナ禍まで、作家生活30年の集大成! フランスきってのベストセラー小説家による、待望のエッセイ集。 ウエルベックは〈私が政治的に正しくなって、それで何が得られるのでしょう。〉と語る。その歯に衣着せぬ発言の数々には、眉をひそめさせられるものもある。拒絶反応を引き起こす読者もいるだろう。 詩人や文学者をはじめ、左翼知識人にフェミニスト、映画、音楽、建築、宗教……まがまがしくも目くるめく混乱した世界に「介入」するウエルベックの論舌は、鋭く、耳目を集める。 多種多様なジャンルを射程におさめた本書に通底するのは、「口撃」しようとする批判精神ではなく、人間性への関心だ。そこから浮かび上がってくるのは、書くことに愚直にむきあう人物の創作の秘密─「現実を観察し、未来を予測する小説家の哲学」である。冷笑よりも、素朴だが重要なメッセージが込められている。 ヴァレリー・ソラナスの問題作『SCUMマニフェスト』の解説(「人類、第二の段階」)も完全収録! なお巻末には、フランスの政治や文化がわかるように、訳者による「索引註」を付す。
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